第1話:ミドルフェイズ13
◆ Middle13/Scene Player――美裂 ◆
美裂とマリアンナが辿り着いた先は、荒れ果てた公園だった。
あちこちに点在する人の背丈程度の穴――その正体は土を掘り返して作られた
この公園は、一か月前までUGNが拠点として利用していた敷地で、そして戦場になった。
破壊された軍用車両。ぼろぼろの医療テント。足元からぽっきりと折れて転がるレーニン像。顔を吹き飛ばされた労働英雄の胸像。
戦いの
GM:では、最後……エリア5だね。誰が登場する?
マリアンナ:うぅん……私は……出ようかな。
美裂:私もまだ侵蝕に余裕あるから出ても問題ないね。
アンゲリーナ:侵蝕的にはお休みしたいところ。
イワン:……これ、登場してない人はどういう扱いになるんだろ。
GM:アンゲリーナはレーラとかに連絡を取って事情を説明中とか。
話し合いの末、マリアンナと美裂がシーンに登場することになった。
侵蝕上昇ダイスも、ちょうど良い塩梅になり、揃って侵蝕率は70台後半になった。
GM:では、描写に入ろう。エリア5は以前UGNの拠点に使われていた公園だ。一か月前のRZの急速拡大に伴ってここまでジャームの集団が押し寄せてきて、まだその戦闘の痕跡が残っている(情報項目をメモに表示)。
▼「旧UGNノビンスク支部跡地」<情報:UGN>9もしくは<知覚>7
マリアンナ:美裂いける?
美裂:行きましょうか。<情報:UGN>、コネ:UGN幹部使って判定。ポンコツじゃないとこ見せてやる!
コネの効果もあわせて、合計5個のダイスをロールする美裂。
しかし、その最高値は7。そして美裂の技能値は1……。1足りない。
イワン:……。
GM:……。
美裂:……財産点1使います。不正はなかった。いいね?
マリアンナ:あっ、はい。
GM:では、公園地下にある旧UGNノビンスク支部長室で、壊れたボイスレコーダーを見つけるね。機械知識を駆使するか、エフェクトを使えば修復もできそうだ。
▼「壊れたボイスレコーダー」<知識:機械工学>9もしくは適切なエフェクト
イワン:適切なエフェクト?
GM:《サイコメトリー》とか。
マリアンナ:持ってないわね。そうなると知識判定……しかも機械工学?
美裂:「おっと……これはボイスレコーダーか。でもどうも壊れてるみたいね」
マリアンナ:「私、機械はあんまり得意じゃないわよ? しっかし、これ……”誰の”ボイスレコーダーかしらね?」
美裂:「……ニコライ支部長……」 ぼそっと。
マリアンナ:……。判定に挑戦するわ。
GM:……マリアンナはモルフェウスだし、自分のシンドロームの能力を適切に使える知識があるか、ということで<知識:レネゲイド>でもいいよ。難易度は同じく9で。
マリアンナ:ありがとう。では、<知識:レネゲイド>で判定。コネはなし。素振りね。(ダイスロール)うっそ、21よ。
美裂:一発勝負で行けたわね……。
マリアンナはボイスレコーダーを手に取り、念じるように意識を集中する。
モルフェウス能力者ならばこの程度の単純な機械の構造を把握するのは容易い。
――だが、彼女にできるのは”そこまで”だ。
マリアンナ:「《トレース》……どうやら、回路の故障みたいね。ちょっと待っててちょうだい。類似部品を探してくるわ。私はあいにく、”硝子しか作れない”の」 そうぼやき、部屋をがさごそして何とか修理できたわ。
美裂:「わかった。お願いします」
マリアンナ:「……美裂、さっきの口調が抜けきってないわよ」
美裂:「え? ウソ?」
マリアンナ:「私は”下”よ? 敬語ってどういうことよ」 と、美裂をからかう。
美裂:「うーん、まぁ人にものを頼むときはちゃんとそうしないといけないだろうし」 ぶつぶつ。
GM:修理は完了したけど、どうする? 再生する?
少しばかり美裂は悩んだが、相談してこの場で再生することに決定した。
美裂:……このまま一緒でも構わないわ。再生して。
GM:はい、では再生するよ。
再生されたボイスレコーダーから聞こえてきたのは、機械越しにも威厳の渋みが出る男性の声だった。
「……私は、ニコライ・ジュガーノフ。UGNノビンスク支部長だ」
ニコライ(GM):「現在、支部はジャームに包囲されている。幸いなことに避難誘導は完了し、ビルを崩して道を封鎖したので、時間稼ぎは出来たはずだ。
……此度のRZの急速拡大とジャーム集団の暴走……上手く偶然を装っているが、私はある種の作為を感じている。つまり、裏で手を引く何者かがいるということだ。
だが、既に私は《リザレクト》も使えない。このまま死ぬか、ジャーム化するだろう。だからこうして記録を残すことにした。
恐らく私の跡を継ぐのは、武蔵になるだろう。……武蔵、手間をかけるが、もしもこの記録を見つけたら、妻と娘に伝えてくれ」
深呼吸の後、彼は短く告げる。
「愛している、と……」
簡素で月並みだが、聞く者に紛れもなく真実であると理解させる声音。
そこでボイスレコーダーの記録が終わる――かに思われたが、不鮮明な声量で「この反応、まさか逃げ遅れ……」と呟くニコライの声が、最後に聞こえてきた。
GM:以上が、ボイスレコーダーに記録されたすべてだ。
美裂:「……ニコライ……支部長」 ボイスレコーダーをじっと見つめる。
マリアンナ:「……ラストメッセージってやつね」 ……GM、ちなみに周囲に死体はある?
GM:ありません。
マリアンナ:「でも、死体がないわね。どこか違う場所で果てたか、あるいは……」
美裂:「マリアンナ。あなたも、もう予想はついてるんでしょ? だったら……それ以上、言わないで」
膝から崩れ落ちて、美裂は弱々しく
いつも人当たりの良い笑顔を浮かべて、綺麗事を呟く端正な顔立ちが――今は、涙を堪える
マリアンナ:「……悪かったわよ。でも、他の奴らには言わなくていいの? イワンはともかく、アンゲは紛いなりにも軍人だけど」
美裂:「お願い、私たちだけの秘密にしておいて。前支部長……ニコライ・ジュガーノフは立派な人だった。それだけでいい」
マリアンナ:「……わかった、約束するわ。他言はしない。これでいい?」
美裂:「ありがとう。私、あなたのそういうところ好きよ」
マリアンナ:「そう。今回は素直に受け取っておくわ」
目元を指で
さしものマリアンナも、毒づく気にはなれなかった。
美裂:「さて、伝えないといけないメッセージができた。それに最期に何者かの尻尾を掴んでくれた。あとは私たちが行動に移すだけ――」
GM:そのとき、キミたちの端末に緊急連絡が入る。オーボロテニと思われるジャームが、警戒地帯に出現。駐留部隊を圧倒し、避難キャンプへ向かおうとしているらしい。
美裂:「……早く行きましょうマリちゃん。被害が出る前に処分……しないと」
マリアンナ:「そうね。仕事を果たしに行くとしましょう。安心して、全力で”殺してあげる”から」
「それが――せめてもの慈悲でしょ?」
「ありがとう。でも、これは私の……ケジメだから」
「そう、じゃあ頑張んなさいな」
いつも通り素っ気ない――だけど、少しだけ柔らかいマリアンナの返事を最後に会話は打ち切られ、ふたりは足早に旧支部跡地を去った。
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