第1話:ミドルフェイズ09

◆ Middle09/Scene Player――イワン ◆



 医師の診断を以てリハビリテーション期間を終えたイワンは、支部の主要構成員と合流し、執務室へ向かった。

 美裂がパソコンを操作すると、予定通り、壁面にしつらえられた大型ディスプレイにレーラの姿が映る。彼女は順繰りに全員を見渡し、


「イワン。調子はどうかしら?」


 最後にじっとイワンの姿を認めながら問う。

 イワンは、口のに苦笑をにじませて答える。


「この通り、快調です。やっぱりオーヴァードなんだなって実感しますよ」



レーラ:「そう。病み上がりに悪いけど、早速任務よ」

マリアンナ:「相変わらず忙しい事ね。まぁ……休みがあっただけマシかしら」

レーラ:「前にも言ったように、今の目標はオーボロテニ。飢餓衝動のままに動くジャームと推察されているわ。そのジャームを……」


「殺しなさい」


 一瞬、静寂の間が空く。


イワン:「……捕獲では無く、抹殺、と」


 UGNは、オーヴァードと人間の共存をうたう組織だ。

 将来的にジャームの治療法が確立されれば、彼らも社会に復帰するかもしれない。

 ゆえに、可能な限り捕獲して冷凍睡眠施設に保存、研究するのがUGNの基本方針なのだが――。


レーラ:「あいにく、捕まえて冷凍保存する余裕なんかないのよ」


 ジャームを捕獲したとして、冷凍睡眠施設へ運搬するには陸路か空路を用いる必要がある。

 だが万が一、予期せぬ事故が発生すれば、線路や道路、滑走路といったライフラインに影響を及ぼしかねない。

 その際、避難キャンプに与える悪影響はいかばかりか。理屈としては、筋が通っている。


マリアンナ:「そうそう。ジャームは捕獲するだけ無駄だからね。殺すのが一番手っ取り早いのよ」


 ぶっきらぼうに言い放ち、マリアンナは横目で美裂を一瞥いちべつする。

 予想通り――と言うべきか。彼女は伏目がちになって、下唇を噛んでいた。


美裂:「……仕方ありません。そうしなければ被害は増える一方ですから」

イワン:「……ままならないものですね」

レーラ:「質問がなければ、すぐ任務に取り掛かりなさい」

マリアンナ:「わかったわ」

アンゲリーナ:「了解。それじゃ、仕事にかかりましょう」

イワン:「Всё понятно承知しました」 一礼して部屋を去りましょう。さぁここからが私の本領発揮で御座います。

GM:ああ、ここからは情報収集フェイズだ。


 ここでGMは、専用のマップを表示しながら説明を行った。

 残念ながらカクヨムでは画像を投稿できないため、お見苦しいが以下のようなテキストによる簡易マップを示す。


①―②――③

  |

  ④―[]―⑤


※このうち、RZの影響下にない外縁部に分類されるのは①だけで、あとはすべてRZ表層に属する。


GM:まずはマップを見てくれ。これはRZ外縁部~表層部のマップで、主に5つに別れている。探索のルールを以下の通りだ。どのように行動するか、考えてくれ。


----------------------------------------------------------------------------


①エリアは5つに分かれており、灰色の通路で繋がっている。ただし4-5間などの通路は道が塞がっている。詳しくは現地で調査すること。

②エリアへの登場にはシーンインを要する。

③1度でもPCが登場したエリアを「到達エリア」、そうでないエリアを「未到達エリア」と呼称する。

④「未到達エリア」へ行くためには、通路で繋がったエリアが「到達エリア」でなければならない。

(例えば、「未到達エリア」のエリア4へ行くには、エリア2が「到達エリア」になっている必要がある)

⑤「到達エリア」から「到達エリア」には、ジャンプが可能。

(例えば1,2,3のエリアが「到達エリア」の場合、現在地がエリア3のPCでもエリア1に戻れる)

⑥PCは、全員エリア1に行ったことがある(到達エリア)ものとして扱う。



エリア1……UGNノビンスク支部・避難キャンプ。<調達>判定はこの場所とエリア2でしか出来ない。


エリア2……警戒地帯。UGN・ロシア軍の小規模部隊が駐留。<調達>判定はこの場所とエリア1でしか出来ない。


エリア3……RZ表層。廃墟と化した市街地。放棄されたスーパーマーケットがある。


エリア4……廃墟地帯。エリア5へ続く道が瓦礫で封鎖されている。


エリア5……旧UGNノビンスク支部跡地。1ヶ月前のジャーム集団による攻撃で壊滅したと思われるが、詳しい状況は不明。


----------------------------------------------------------------------------


GM:まず、エリア1は支部などの拠点がある場所で、最初から到達済みだ。よって、最初はエリア2に行くことになるだろう。

美裂:でしょうね。

GM:……ちなみにひとりで出ることもできる。侵蝕を抑えたいなら、団体行動は避けたほうがいいかも。

マリアンナ:エリア1で出来る情報判定などはあるの?

GM:ないよ。調達しかできない。エリア2にはイベントがあるけどね。


 話し合いの末、侵蝕率が低い美裂と、イベントに興味を示したアンゲリーナの二人がエリア2に向かう運びになり、シーンを切り替えることになった。



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