Automatic Rondoマリナとハルカとツキノ 結婚前の出来事
くさかみのる
第1話
マリナ:こんにちは、あなたがツキノちゃんね。はじめまして、ハルカくんのお嫁さん候補、マリナです
ハルカ:マリナ。頼むから外ではくんづけしないでって言ったろ?
マリナ:あら、そうだったかしら? ごめんなさいね、ハルカくん
ハルカ:君、改める心算ないだろう
マリナ:うーん、どうかしら
ハルカ:ったく。(携帯が鳴る)っと、誰だ? っげ、教授。悪いツキノ、ちょっと席外すな
ツキノ:え、ちょっと兄さん!
ハルカ:マリナと仲良くしてくれ!
ツキノ:……仲良くって
マリナ:仲良くしましょ
ツキノ:タナベ マリナさん
マリナ:はい、なんですか
ツキノ:兄さんと結婚するんですか?
マリナ:そうできれば嬉しいけど、ツキノちゃんは反対?
ツキノ:別に。兄さんのことには口出ししないので、勝手にどうぞ
マリナ:うーん。ツキノちゃん、ハルカくんのこと嫌いなの?
ツキノ:嫌いでも好きでもないです。他人に興味ないし。だから貴女も私に関わらないで――
マリナ:あらあらあら! なにこれ
マリナがツキノの両頬を掴み捕らえる
ツキノ:なにこれって、なんで勝手に顔触るんですか。離してください!
マリナ:ちょっと待って。本当にどういうこと?
ツキノ:なにがです!
マリナ:お肌、かさかさ
ツキノ:んな!
マリナ:爪もボロボロで髪のキューティクルがない
ツキノ:研究者に、そんなもの、必要ありません!!
マリナ:ダメよ!!
ツキノ:な、なんで
マリナ:だってツキノちゃん、女の子でしょ
ツキノ:女子である前に研究者です
マリナ:いいえ、研究者である前に女の子です!
ツキノ:貴女みたいに外見綺麗にしても馬鹿にされるだけだし、教授に媚売ってるとか陰口叩かれるんですよ?
マリナ:あら、媚が売れるほど綺麗になるのね?
ツキノ:それはものの例えで
マリナ:誰かに陰口言われたの? それで怖がっちゃったの?
ツキノ:……怒りますよ
マリナ:どうして怒るの?
ツキノ:どうしてって
マリナ:外見で媚が売れるなら売ればいいのよ。研究職だからって舐めてもらっちゃ困るわ。研究費もコネも必要なんだから、使える武器は使わないと
ツキノ:そんなの卑怯じゃないですか!
マリナ:あら、自分の魅力で相手とお近づきになるのは卑怯なの? 陰でこそこそ悪評を広げるのは卑怯じゃないの?
ツキノ:……
マリナ:ねぇツキノちゃん、結果で評価してほしいと思うのは間違ってないわ。研究者ってそうあるべきだもの。でもそれだけじゃ人生上手くいかないの。チャンスを自分の手で作って、もぎ取らないと
ツキノ:もぎ取るって
マリナ:もぎ取るの! 教授だって馬鹿じゃないんだから、媚を売って引っかかるとは限らないわ。好みを把握して絶対に落とせる作戦で挑まないと。それに、お化粧したり外見を着飾ったりしてると、思わぬところで違う教授が引っかかったりするし
ツキノ:兄さんもそうやって落としたんですか?
マリナ:うん? ハルカくんはね――最大限にあの手この手で落としたの。どうやったか聞きたい?
ツキノ:いえ、興味ないです
マリナ:まずはね、好みの香りを調べて――
ツキノ:興味ないって言ってるんです!
マリナ:あ、そうだわ。ツキノちゃんもあの香り好きなんじゃないかしら。外見を整えるのに抵抗あるなら、まず香りからとかでもいいわよね。近づいたときにふわりといい香りがするのも、ぐっとくるものがあるもの。うーん、柑橘系が似合うかしら。でもやっぱり好みで作るべきよね。ねぇツキノちゃんはどんな香りが好き?
ツキノ:私の話、聞いてませんね?
マリナ:うん? 聞くに値したら聞いてあげるわ
ツキノ:……言いましたね
マリナ:言ったわよ
ツキノ:絶対に話、聞いてもらいますから!
マリナ:そんなに私とお話したいなんて。仲良くなれそう
ツキノ:絶対に仲良くなんてなれません! 私、貴女みたいな人嫌いです
マリナ:もう、私のこと大好きだなんて。大胆な告白ね
ツキノ:耳おかしいんじゃない?
マリナ:いたって正常よ。じゃあ買い物に行きましょう。まずはそのあり得ないほどにダサい服を捨てないと
ツキノ:人の服装にケチつけないでよ!
マリナ:女の子とのお買い物なんて、胸が高鳴るわ
ツキノ:引っ張らないで! ちょ、なんでそんなに力強いの
マリナ:鍛えてますから
ツキノ:ちょ、も、兄さんー!!
間
ハルカ:ふぅ、やっと帰ってこれた。教授無駄話しが長いんだよなぁ。あれ? マリナー。ツキノー? これは……置いて行かれた?
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