マトリョーシカな悪夢(終盤その2)

 絞るように引いた引き金から、12.7mm弾が次々と発射される。

 M型のポリゴン状装甲を削り、一部は貫通までした。

「おまけだ……!」

 ロケットグレネードを発射し、4体のR型もろともM型を仕留める。

「これで、どうだ……!」

 だが、再びM型が姿を現した。やはり、R型4体に支えられている。

「イヤな予感がするぜ……!」

 M型の重機関銃弾を障壁で防ぎつつ、龍野は引き金を引き続けた。頭部に命中した弾丸が装甲を貫通し、コアを貫通する。

「逃がすか!」

 R型4体にも弾丸を撃ち込み、確実に排除する。

(下はどうなってやがる……!?)

 M型が途切れた隙を突き、ビル付近の地上の状況を確認する。

 龍野が見たのは――次々と浮遊するM型であった。龍野からは見えないが、漏れなくR型が下で支えている。

(きりがねえな……!)

 龍野も先行した8人の後を追うように、屋上を後にした。


「どうにか、逃げられたな……」

 ハーゲンが安堵あんどの声を漏らす。8人は、エレベーターで1階へと向かっていた。

「いえ、そうは思えません。ハーゲン殿」

 ハーゲンに異論を唱えたのは、ヴァイスだ。

「恐らくですが……この反応を見る限り、4階の上下階で、このエレベーターは使えなくなるでしょう」

「まさか、そんな……」

 ハーゲンがヴァイスに異を唱え返そうとしたとき、エレベーターが揺れた。

 エレベーターは「地震」の文字を浮かべていた。

「案の定ね。地震と誤認したことによって、遠からず止まるわ」

 そして、扉が開いた。

 ヴァイスがチラリと階数表示のパネルを見ると、数字は"4"と表示されていた。

「仕方ありませんわね、出ましょう!」

 ヴァイスは敵や罠が存在しないことを確認しつつ、真っ先にエレベーターを出た。

『もしもし、龍野君?』

 情報の伝達も忘れず、最寄もよりの階段を探した。


『もしもし、龍野君?』

 ヴァイスからの念話だ。

『何だよ?』

『悪いけれど、階段で移動してちょうだい。エレベーターが止まってしまったの』

『あいよ。1階に行けばいいんだな?』

『ええ』

『わかった。ああ、それと一つ。上からポリゴン野郎と女子小学生スタイルのサイボーグ達が来てるから、早めに脱出しようぜ』

『わかったわ。ありがとう』

 ヴァイスが念話を打ち切ったのを確認すると、龍野は思案した。

(さて、階段を降りるのは少々時間がかかり過ぎる……。そうだ、49階に降りてからは、んだったぜ!)

 策を思いついた龍野は、まず49階まで降りた。

(よし、到着! エレベーターホールは……おっと、先に邪魔なヤツの始末だな!)

 近くには、M型が1体いた。R型によって運ばれたであろう機体だ。

 龍野はマシンガンを召喚すると、出し惜しみなくロケットグレネードを発射した。

 M型は察知が遅れ、直撃を受ける。

「消えてもらうぜ!」

 すかさず12.7mm弾を撃ち込む。脆くなった装甲もろともコアを貫通し、機能停止に追い込んだ。

(さて、邪魔は排除したが……遠からずここも襲われる。その前に、さっさと降りねえとな……)

 マシンガンをしまい、大剣を召喚。

 エレベーターの扉を四角形にくり抜き、龍野は

「うおぉおおおおおおお!(魔力、逆噴射開始!)」

 大剣を壁に突き立て、魔力を逆噴射して速度を調整しつつも、龍野は姿勢を制御しながら降下していた。

(今だ!)

 エレベーターの筐体を支えるワイヤーを握り、ラペリング(ロープを用いて行う降下)の要領で、一気に下まで滑り降りる。

(これならしばらく……おっと、どうやら邪魔されたぜ……!)

 龍野が内心で毒づきながら外の景色を見ると、R型がいた。

 しかも、龍野の降下に必要なワイヤーを狙っている。

(出来る事なら、このまま滑り降りてえな……!)

 大剣を壁から引き抜き、落ちながら狙いを定める龍野。だが、思うようにいかない。

(しゃあねえ……だったら……!)

 ワイヤーを蹴って壁へ跳び、落下を停止させる。

(手を変えるだけだ……ッ!)

 ガラスをビームでくり抜き、隙間から脱出。

 そのまま魔力を噴射し、滞空を始めた。

「邪魔するなよ、おら!」

 即座に大剣を構え、ビームを撃つ。

 今度は狙いが安定していた為、R型に直撃した。

「よし!(急いで1階の敵を排除するぜ……!)」

 飛翔状態を続けながら、龍野は降下を再開した。


 一方、ヴァイス達8人は、サイボーグ達の視界から隠れつつ1階へ向かっていた。

「何てことだ……!」

 ヘリのパイロットが、小声でぼやく。

「落ち着きなさい。後少しで、脱出出来るのですから」

 ヴァイスがなだめ、意識を引き戻した。

「着きましたわね。1階に……!?」

 階段のホールから出たヴァイスが、驚愕の表情を浮かべていた。


 M型が、のだ。



現在の龍野の撃破スコア……119体(119,000点)


騎士突撃槍銃アサルト・マシンガンの残弾(途中経過)


      マシンガン…… 113 + 200×5 発


      グレネード…… 1 + 3×5 発



作者による追伸


 有原です。

 前話において、ヘリコプターの末路を描写し忘れていたため、修正いたしました。


 ちなみに、屋上のヘリポートで炎上しております。

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