"H"排除(三体目)

「到着いたしました」

 ハナノの言葉で、龍野はすぐに車を降りた。そして鎧騎士と化し、ヴァイスの指示を――待つまでもなかった。


 なぜなら、この7番エリアには……G型が一体、ポツンと姿を見せていたからだ。


『ヴァイス』

『何かしら?』

 姿を見せている敵に対し、罠が無いかと警戒している龍野。

『反応はいくつだ?』

『二つね。黄金のサイボーグ(G型)と、黄色い機体(H型)がそれぞれ1体ずつよ』

『あいよ、わかった。悪いが、先に橋を渡って0番エリアの端っこにいてくれ。多分、巻き添えを食らわせちまう』

『同感ね』

 ヴァイスはハナノに対し、「0番エリアの橋を渡ったら、右折して50m程進んだ先で止まってください」と要望を投げかけた。


「さて、これでいいな」

 ヴァイスとハナノが乗る車の、発進音を確認した龍野。

「それじゃ……正々堂々、勝負といくか!」

 龍野は大剣を召喚し、正面に構える。

 G型は守護者Guardianごとくその場を動かず、左腕を正面に差し出してグレネードランチャーの銃口を龍野に向けた。

「行くぜ……!」

 龍野は魔力を噴出し、高々と飛翔。G型は龍野のいた場所にグレネードを発射するも、意味は無かった。

「はあっ!」

 龍野は素早くビームを放つ。

 命中したが、浅い。胸部装甲の表面を軽く削っただけだった。

「…………」

 G型は不自然に動きを止めた。

(故障か? なら……!)

 しかし、即座に肩部、胸部、脛部の装甲が展開。その状態のまま、龍野に突進してきた。

(危ねっ……!)

 完全に油断していた。というよりも、龍野の「G型に対する速度の認識と、実際の(突進)速度にズレがあった」ためであった。

 龍野が先に態勢を立て直すが、直後にG型も立て直した。

(隙が無い……。しかし、どういうことだ? 今までのG型とは全然違うな……)

 龍野が逡巡しゅんじゅんしている様子を見て取ったG型は、グレネードを撃ち込んだ。

「~ッ!」

 歯を食いしばり、真横へ急速に移動して直撃を回避。そして勢いそのまま、高度を稼ぐ。

 龍野がいた辺りが、ガスで汚染された。

(そろそろ畳みかけねえと、まずいな……!)

 龍野がその場で制止し、剣を構える。

 だが、G型の肩・胸・脛の装甲はであった。ガトリングガンが回転を始める。

(チッ、俺のミスか……!)

 そして龍野は、弾丸の嵐に呑まれた。


「…………」

 G型は既に人間ヒトに非ず、言葉を発することは出来なかった。しかし、「守るべきものを守り切った」と確信していた。

 あれだけの弾丸を食らったのだ。いくら甲冑を纏っていようと、耐えきれはしない。

 そう思考していたG型は、オレンジ色のビームによって胸部に風穴を開けられた。


「油断したぜ……」

 龍野は右手で大剣を構えながら、G型に近づいた。

「お前は強いさ。だが、俺達にも引けない事情があるんだ」

 G型はもはや、抵抗の様子を見せなかった。ガス弾はかわされ、必殺技スペシャルも耐えられてしまった。

 。そう判断したのだ。

「苦しめるつもりはないぜ。サヨナラだ」

 龍野はG型の頭部にビームを放ち、とどめを刺した。

 機体が崩れ落ち、やがて倒れる。

 すると、頭部からペンダントが飛び出した。卵形の青い宝石を埋め込まれたペンダントだ。

「これは……」

 と、ガシャガシャと音がした。

(何だ?)

 龍野が見ると、H型だった。

 戦闘能力の無いH型がどうして向かっているのか、龍野にはわからなかった。

(どういうつもりだ、こいつ……?)


 すると、H型はアームで


 障壁に阻まれるが、H型はなおも攻撃をやめない。

 やがて両方のアームが、マニピュレータごともげてしまった。

(何だ、何をしている……?)

 龍野が疑問に思っていると、H型は体当たりを仕掛けた。

 やはり障壁に阻まれてしまったが、それでもやめなかった。


 やがて、H型は機体を半壊させてしまった。

 六本の脚部に至っては全てが折れ、機能不全に陥っていた。

 しかし、それでもなお、このH型は龍野に抵抗しようとしていた。

「やめろ……」

 半端に残ったアームで、龍野を殴ろうとするH型。

「やめろ!」

 見ていられなくなった龍野は、大剣を振り下ろし、H型を両断した。


 完全に機能を停止したH型から大剣を引き抜いて消滅させた龍野。

 機体の残骸から、ペンダントと、額に入った写真を発見した。

 ペンダントには、卵形のピンク色の宝石が埋め込まれていた。


 そして写真には、が映っていた。


「……」

 龍野は壊れたH型をG型の傍まで運んでやり、青い宝石をG型に、ピンクの宝石のペンダントをH型に添えた。

 そして二体の間に写真を置き、黙って立ち去った。

『ヴァイス、終わったぜ』

『わかったわ、龍野君。全速力で戻ってきて』

『ああ』

 龍野は二体の残骸から十分に距離を置いてから、魔力を噴射し、ヴァイスの元へと戻っていった。



現在の龍野の撃破スコア……35体(35,000点)

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