"H"排除(二体目、後半)

「よーしよし、いい子だ。ほら、こっちに来い」

 龍野は低速度を維持し、ゴリラを確実におびき寄せる。

『ヴァイス、俺に最も近い別機体の反応は?』

『前方200mよ』

『了解、挑発して引き寄せる!』

 大剣を掲げ、2体目のゴリラの眼前にビームを放つ。徐々に近づけ、装甲表面を軽く削ったタイミングでビームを止めた。

 拡声機能をオンにし、大音声で叫ぶ。

「おら、こっちに来やがれ!」

 反応した2体目。

『ヴァイス、誘導に成功した。最も近い、単独行動中の機体を教えてくれ』

『左に300mよ』

『了解。ところで、確認したいんだが……。例の黄色い機体は、把握できているのか?』

『ええ。エリア中央の窪みに、鎮座しているわ』

『ダミーの可能性は?』

『現状、ゼロよ』

『わかった、ありがとう』

 龍野はゴリラを誘導しつつ、3体目にも挑発ちょっかいをかけた。

 そのとき――


 誘導していたゴリラ同士が、互いを攻撃し始めた。


『おい、どうなってやがる!?』

『まずいわね……! 仲裁して!』

『そうさせてもらうぜ、しくじるのはごめんだ!』

 龍野は強引に2体の間に割って入り、爪を剣で防ぐ。


 削れたのは、ゴリラの爪だった。剣の腹で受けたのにも関わらず、剣は無傷だった。


 そして龍野は両方の機体に、首元を切断しようとし――寸止めをかける。拡声機能をオンにして、呼びかけた。

「俺がいる限り、仲間割れなど起こさせねえ。いいな?」

 そう言うと、龍野は2体から距離を取った。

 2体のゴリラは、「逆らわないのが身のためだ」と判断したのか、龍野におとなしくついてきた。

『ふう、無駄な時間を使っちまった。ヴァイス、3体目と4体目を誘導するぜ』

『頼むわね』


 十分後。

 エリアの隅にゴリラ4体を集め、龍野が剣先からビームを放とうとした。

(何っ!?)


 突如、全てのゴリラが赤熱し始めた。

『龍野君、30秒以内に阻止して!』

 ヴァイスが必死さを滲ませた声で龍野に指示する。

『言われなくても……!』

 赤熱して硬度を落とした装甲を、二本の大剣で削り落とす。

 素早く関節を狙い、計八本の腕部を切り落とした。

「サヨナラだ、ゴリラども……!」

 そして、龍野は独楽こまのように自らの体を回転させながら、ビームを高速連射した。

 4体のゴリラは機能を停止し、爆散した。

『撃破したぜ、ヴァイス』

『お疲れ様。後は中央の黄色い機体だけよ』

『ああ』

 龍野は魔力を噴射し、飛翔を始めた。


 二十秒後。

「それじゃあ、後はお前だけだ」

 龍野はH型を踏みつけ、大剣を突き立ててとどめを刺した。

『反応、全て消失したわ』

『あいよ。残すは7番エリアだけだな』

『ええ。それが終わったら、すぐに0番エリアの調査を始めるわよ』

 ヴァイスの言葉を聞いた龍野は、再び飛翔してヴァイスの元に戻った。

 そして鎧騎士の状態を解除して車に乗り込み、それを確認したハナノが発進した。



現在の龍野の撃破スコア……33体(33,000点)

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