冒険譚 ―リラストニア―

くさかみのる

第1話

 慟哭を響かせていた大地が音を失くした。

 それはただ、音がなくなった一瞬で場に居たすべてが屠られたからに過ぎない。

 音を出すモノが居ないのであれば、音が消えるのは当然。

 光りの閃光が空より一筋。場に居た者が見た最期の光景はソレだろう。

 ともすれば導きの光りにも見える煌きに己が身が砕かれ消滅させられるとは思いもしなかったはずだ。

 女性はそれらを眼下にとらえながら翡翠色の瞳を揺らしていた。

「目標の殲滅を確認。帰還するぞ」

「そーだね。帰りが遅いとクルルバード《飛竜騎士団》たちも騒ぎ出すし」

「あいつらが騒ぐのは、お前が勝手にクルル《竜》を使ったからだろう」

「あー、僕だけ悪者? そっちだってクルルに乗ってるんだから同罪だよ! ねぇ?」

 少年が屈託なく話しかけてくるそれに彼女は笑い返す。

「そうだな。私たちは同罪だ」

「ほぉらあ!」

 クルルに乗りながら談笑する彼らは、いままさに一つの国を滅ぼしたとは思えない陽気さだ。

 彼女は拳を握る、瞳に意志を灯して。

 こいつらは必ず、この手で殺すのだと。

 そして世界を平等に――

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冒険譚 ―リラストニア― くさかみのる @kusaka_gg

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