マルクカギナ
くさかみのる
第1話
薄い藤色のクリスタルの中に、彼女はいた。
中は重力がないのか、少女はフワフワと浮いている。華奢な体、細い手足、この生き物は地上では生きていけないだろう。
上司より命を受け、クリスタルに閉じ込められた彼女を監視する役割を担っているが、敵が来るはずもない。
ここは地下の最下層。上層にいる屈強な猛者たちを倒さなければ辿りつけない場所だ。
ぺたりとクリスタルに手を置くと、驚くほどに冷たかった。
何年、何十年の時を彼女がこの中で生きてきたのか、ヴェルナーに分かることはなかった。しかしこれほどまでに冷たい中は、さぞ寒いことだろう。
「寒くないかい?」
問いかけが無意味であることは分かっていた。返答があるはずもない。それでいい。
返事がないからこそ問いかけたのだ。反応があるはすがなかったのに。
彼女の目が開いた。
マルクカギナ くさかみのる @kusaka_gg
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