零愛(こぼしあい)

くさかみのる

第1話

 愛されていると感じるのは一瞬で、ソレはすぐ彼方へと消えてしまう。

 誰かが言うの愛の言葉をどうすれば信じられるのか。

 言葉は絶対ではない。その場かぎりで効力を失くし無価値となるものも多くある。

 にも拘らず永遠だなどという言葉をなぜ持ち出してくるのか。

 彼らをどうすれば信じられるというのか。

「お姉ちゃんはさ、信じたくないだけじゃない」

 そう言ったのは血のつながらない弟だった。両親の再婚によって無理やり家族とされた間柄の人間。

 愛していると嘯いた輩の一人。彼の愛は信じるに値しない、なぜなら――

「じゃあ、お別れだね」

 彼は明日、この家を出て行くのだから。

 彼を信じることができたのなら、それは考えても仕方のない話。

 結局は誰の愛も信じることができないのだろう。自分はそういう生き物だ。

 そうして愛は手をすり抜けていく。

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 零愛(こぼしあい) くさかみのる @kusaka_gg

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