羊が一匹

戸賀瀬羊

あこがれ

海中の透明なトンネルを電車が走る。

始発も終点もなく、ただ大きな円を描くように走っている。


僕はその窓からイルカを眺めていた。


水中で生きていけることを約束された、芸術としか言いようがない流線形が、

うらやましい。


僕だって叶うなら水中で生きたかった。

勝つためじゃなく、生きるために泳ぎたかった。


あぁ、この両足が恨めしい。


塩分の濃い水が頬を伝うのをぬぐいもせず、

一日中電車に乗ってイルカを眺め続けた。

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