恋の後味

空色

第1話 君のことばかり見てしまう

彼女に出会ったのは白嵐高校はくらんこうこう入学式の日だった


今日は入学式でクラス分けの発表日だ。せめて1人くらい知り合いがいて欲しい、全員知らないとクラスで孤立する気がする。


白稜はテスト結果でクラスを振り分ける。クラスは全部で1組から10組まである。1組は3教科で270以上が必須な超特別なクラスで10組は合格点ギリギリの生徒のクラスだ。


1組に行きたいとまでは言わないけど10組はいやだな〜。もちろん1組に名前は無い、2、3、4も共に名前がない、松本、松本はーあった!結局5組だった。まあ、特に特技もない俺には真ん中が丁度いいか。


あとは知り合いがいるかだけど、、、「誰もいない」思わず声に出してしまった。そんなわけない誰もいないなんて見逃しただけだ!もう一度見れば、、、いない。


うわーどうしよう1年間このクラスでやって行けるかな。隣の人が怖い人だったらどうしよう。あー教室が迫ってきた、足がやけに重いし緊張して体調悪くなりそうだ。このドアを開けたら1年間ともに過ごす人達がいるのか、もうどうとでもなれ!そんなことを思いながらドアを開けた。


その時周りには他にも人がいたのにその子が真っ先に目に入ってきた。教室の窓から吹く風にたなびく絹のような髪、猫のようなクリっとした目、そんなことを思って見とれてしまった。


とは言えずっと見ているわけにもいかないし、自分の席に座った。幸運にも1番後ろの席だった。これで授業中に多少は遊んでも怒られないな。


せめて隣の人とくらい話そうと思ってたいたんだけど、教室で誰も一言も話さない、そんな状態で話せるわけない。まあまだ初日だ。明日は話せるさようになるはず、きっと話せる。怖くてそう言い聞かせた自分がいた。


次の日、また次の日、誰も話さない。3日目なのに未だに誰1人話してないなんて、このままじゃボッチ街道まっしぐらなのでは〜どうしようー。そんなことを考えていたら。


「あの、これからよろしく隣の席の 山中やまなか 優希ゆうきです」

話しかけてくれた〜!良かったーこれでボッチじゃない。

「えと、松本まつもと 隼人はやとです、よろしく。入る部活とか決めた?」

「水泳部に入ろうと思ってるかな」


今日は1日ずっと山中と話していた。山中は俺が思っていたよりすごいやつだった。小学校の時に水泳で全国大会に行ったこともあるらしい。途中怪我で大会の成績は良くないのが続いていたがいまではかなり元に戻っているらしく、全校大会も夢じゃないそうだ。とりあえず友達が出来て安心した。


山中は明るい性格もあってクラスではみんなと仲がいい、だからそれにくっついてるだけで俺も自然にクラスに溶け込めた。山中には感謝しかないな、今度ジュースでも奢るか。


そんな時、彼女のことがまた目に入った。どうにかして話したいな、話しかける勇気なんて持ち合わせてないけど。そう言えば名前なんだっけ、話すとか以前にまだ名前も覚えられてないや。入学式の時にもらった名簿に載ってるはずだけど。

いずみ 晴菜はな

泉か、よし!絶対に忘れない。


結局1週間も経って一言も話せてない。どうすればいいんだよ〜、誰にも言えず1人で悩んでいたら。最近アニメ好きってことで仲良くなった武田たけだ寺口てらぐち羽川はねかわ古谷ふるや、特に武田は家も近くてよく話す。この4人のうちの寺口と古谷が。


「なあ寺口、泉さんもペイントゥーンやってるらしいぞ!1か2か聞きに行こうよ」

「あ、そっかお前2持ってないもんな、可哀想に仲間が欲しいんだな」


俺も1しか持ってないから聞きに行きたい、そう言って2人に便上してやっと話に行けた。いつも後ろから見ることしか出来なかったけど、今日は正面から見れる。2人は2だと分かったら満足したのか直ぐにどこかに行った。俺的にはラッキーだった。


その後は昼休み中ずっと話してた、席に戻ったら山中に冷やかされて面倒だったがめちゃめちゃ楽しかった。LINEも交換出来たし家帰ってからも楽しみだな〜。


ただ泉と話してる時1度だけ彼女の顔が脳内をよぎった。思い出したくない、忘れたはずの過去の記憶。自分自身に問いかけても答えが帰ってくることは無かった。

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