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「絶対羨ましいとか思ってないし、そこ以外は全部勝ってますけどなにか、みたいな顔とか本当にイライラします」

 あー分かるような気もしない事もないけど。そういうの高校時代にもあったし、たまーに女性グループのお客様で見る時もあるし。

「別にね、良いんですよ太っていることをバカにされるのは。私だって美味しいものを食べたい時に食べたいだけ食べているから文句は言いません。好きでやっているんだし。でもね、一旦嘘吐く必要ないでしょ?」

 確かにね。でももしかしたら本当に羨ましいくらいペチャかもしれないじゃん。

「本当に羨ましいって思っている子は見れば分かります。その子達とは全然違う」

「そう、なんですね」

「女の勘ってやつです。言葉に棘があるものはすぐに分かります。いや、そんなことより」

「えっ」

 急に強くした語語尾に変な声を出してしまう。なになに、どうした。

「私、振られたんですっ」

 な、振られた? なんて散々なの。なんて失礼か?

「つい先日なんですけど、思い出したら今でも腹が立ちます」

 その表情からしてはらわたが煮えくり返っているのが見れば分かる。

「彼とは二年付き合っていたんですけれど、ずっとぽっちゃりが好きって言ってたんです。だから私のことを好きになったんだって。細い子は物足りないって言っててっ。それなのにっ」

 あー、なるほど。

「凄く細い子と浮気していたんですよ! 意味分かんなくないですか。しかもね、最後に元々ぽっちゃりじゃなくて細い子の方が好きだったしとか言われてっなんで嘘吐いたのって感じで」

 泣くと怒るの間くらいの表情でトコロザワさんは溢す。

 仕事も料理も出来るし気配りも出来るし愛想もいいし、いったい彼は何が嫌だったんだ。

「結局胸が大きいのが良かっただけとか言われて、本当に辛い」

「それは大変でしたね」

「はい・・・」

 その声は本当に疲れ切ったようで。本当に気の毒に思えてくる。とりあえず元彼は足の小指をタンスの角で毎日負傷しろ!

「マスターだけは嘘吐かないでくださいね」「もちろんですよ」

 俺はお客様に嘘を吐いたりしない。トコロザワさんの終電まであと十分を切ったって今気付いたところだし・・・まじで。

「トコロザワさん傷心のところ大変申し訳ないんですけど・・・」

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