綺麗な花ほど・・・?
カゲトモ
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「この世で一番嫌いなんです」
オススメのカクテルを、とオーダーを受けて作ったカクテルを一口飲んでからトコロザワさんが言った。
え、ウソ嫌いなやつ作っちゃった? なんて一瞬不安が過ぎったけれどその後に続いた言葉でホッと胸を撫で下ろした。
「嘘が」
「嘘、ですか?」
胸を撫で下ろせるようなワードじゃなかったけど。
「はい、この世で一番嫌いです」
そうきっぱりと彼女は言ってもう一口モスコミュールを飲んだ。そうだよな、今日は暑かったからって言われて作ったモノだし、ウォッカもジンジャエールもライムも今までいろんなカクテルで提供してきたはずだし。ちょっと焦った。
いやしかし、急にどうした? 仕事も恋も順調だったはずでは?
「どうかしたんですか?」
「うっ」
今度は視線を外して息を呑んだ。ちょ、仕事も恋も禁句だったかしら?
「ちょっとしたことがあって・・・」
そのトーンからしてちょっとしたって感じじゃないけど?
「お察しの通り、嘘を吐かれたんです」
まぁそうだろうと思ったけどね。急に言い出したから。
「仕事はね、もう、ほら、嘘も方便なんて言いますけれど、そこらへんに転がっていたりするでしょう? 嘘が」
なんて同意を求めるように言ってくる。そりゃ社交辞令を含めたら嘘で溢れているとも言えるけれど。俺がそれを同意したらなぁ・・・リップサービスのない俺なんてただの無愛想な奴になっちゃうじゃん。
「マスターはいいんですよ。ある意味正直だし、そのリップサービスの嘘も楽しいから」
そりゃよかった。
「でもそのリップサービスが本当に面白くない人もいるでしょう? 明らかに嘘丸出しな人とか。例えば私を見て胸が大きくて羨ましいとかいう細い女とか」
キッと一瞬険しい顔つきになってグラスを仰ぐ。トコロザワさんは世間で言うぽっちゃり体型だ。
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