死闘 2


相手は元々持っていた剣とさっき創造した剣の二本構えてこちらを見ている。

まるで、『本気を出せ』と言わんとばかりに。


「フッ、お前がそう来るなら俺も本気でいってやる!」


そう言って、俺も刀を持っていない左手に剣を創造する。

消費魔力は75。鋭さと切れ味を持っている刀より少し弱くする。その代わりに丈夫さを刀よりも少し強くする。


「さて、第二ラウンド開始だ!」


俺が漆黒の剣士に向かって走るのと同時に漆黒の剣士も俺に向かって走り出す。


「ハァァァッッッ!」


お互いが間合いに入ると右手に持っている剣がぶつかる。しかし、それだけで勝負が決まるはずもなくぶつかって弾かれた瞬間に左手の剣がぶつかる。


「……やるな……!」

「…………」


漆黒の剣士は無言。本当は魔力で動いているのではないだろうか?だが、確かにあの時『ハァァァァ』なんて叫んでいた。

そうなると、あの鎧の中には人か魔物がいることは確かだ。いや、亡霊剣士なんてこともあり得るな。


「ハッ!」

「……」


お互い、剣を斬り合っているが中々勝負がつかない。

客観的に見れば技量はほぼ同じように見えるがシロウは少し危機感を感じてきた。


(チッ、あいつの方が技量は若干上か)


このままでは俺の方が先に斬られてしまうのも時間の問題だ。

ならば、あいつの一歩先を俺は行く!

その瞬間に俺は左手の剣を漆黒の剣士に向かって投げる。

だが、漆黒の剣士はそれを持っている剣で弾く。

漆黒の剣士が剣で弾いた瞬間に既に接近していた俺は右手に持っていた刀で切り掛る。


「……やっぱりこれも受けられるか……」

「…………」

「だがな、俺がこれだけで終わるはずがないだろ!」


漆黒の剣士がもう片方の剣で攻撃を仕掛けくる。

その攻撃を俺は高速思考で間一髪回避して、その勢いで弾かれた剣を回収し、俺の方を向く前に刀と剣でクロスにして同時に斬る。


——その攻撃は見事に命中した。


相手の状態を見るべく後ろを見た。

その瞬間……


『……ウ……ぶ…!?』

「………!?」


突然謎の声が脳に響いてきた瞬間に激しい頭痛が俺を襲った。


『………!こ………!』

「グッ……!」


何故、漆黒の剣士を見た瞬間に頭痛が来たのかわからないがこれだけはわかる。


——これは『』だ。


正確に言えば、元々この体の持ち主だった人の記憶だ。

だが、女神様は『この体を作って憑依させる』と言っていた。この体が作り物だとしたらこの記憶は何だ?

そもそもこの体が作り物だったら——


——今の俺は人間ではない……?


そんなことを考えていると……


「………」

「!?しまっ——」


ドンッ!!


この体の記憶について考えてしまったせいで今戦っていた漆黒の剣士のことを忘れていた。

気づいた時には相手に首を掴まれて床に叩きつけられていた。


「カハッ……!!」


押さえつけられて動けない。まさに絶体絶命の状況だった。


「シロさん!!」


突然呼び声が聞こえた。あの声は……リアラ!?


(何故今出てきた…!?さっきの叩きつけられた時の音が原因か……)


リアラが出たということはエレナも一緒に居るはずだ。出来ればここから早く離れてほしいが漆黒の剣士に首を掴まれているためうまく声が出せない。


「リアさん!…て、シロさん大丈夫!?」


漆黒の剣士は声に反応してリアラ達がいる方向を見た。

まずい、このままではリアラ達がやられる。剣を構えてリアラ達に攻撃を仕掛ける……と、思いきや。


「……フェ…………ト………?」


リアラの顔を見た瞬間に急に動きを止め漆黒の剣士は微かに何かを呟いた。


「ガ、グガァァァァッッッ!」

「!?」


様子がおかしい。急に頭を抑えて苦しみ出した。

そして、漆黒の剣士は段々薄くなって消えていった。


「き、消えた……?」

「…………」


漆黒の剣士は消えたがあれは死んではいないだろう。

近いうちにまた出てくる、そんな気がする。


「……大丈夫ですかシロさん」

「……まぁ、今回は大丈夫だ」

「そうですか、良かったです」


思わぬ強敵と遭遇してして撃退はできたが目的のデビルスは倒せなかった。と言うか、既に倒されていた。


「はぁ……デビルスについてはまた出直すか」

「そうですね。今は町に帰りましょうか」

「特に何もしてないのに……ま、別にいいか」


町に帰ることにはリアラとエレナも賛成した。

でも、謎の漆黒の剣士といいゴブリンメイジの変異といい何か嫌な予感がする。


俺は、この嫌な予感が何なのかはわからないが前の時のように的中しないことを祈りながら町へと向かった。

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