死闘 1
(ここは先に仕掛ける!)
相手に先手を取られてこちらが不利になってしまってはまずい。
先手必勝、という言葉を信じて俺は漆黒の剣士に接近する。
「創造!」
消費魔力は50。鋭さを六割、丈夫さを四割で創造する。
この創造で大事なのは鋭さや丈夫さよりも形が重要だ。この形でなければ俺の作戦が上手くいかない。
そして創造した剣は鍔がなく、くの字の様な刃の形をしていた。
それと同時に同じものをもう一本創造する。
「ハッ!」
俺は漆黒の剣士に接近しなら創造した二本の剣を相手にではなく相手の少し隣に向かって横に回転させながら投げる。
「………」
相手の注意が俺が投げた剣に一瞬だが逸れた。
「ここだ!」
持っていた刀で相手に斬り掛かる。
漆黒の剣士も少し反応が遅れたのか、俺の攻撃を遅れて防ぎに来る。
——だが、今更防いだところでもう遅い!
ザクッ
「……ま、鎧着てんだからこうなるよな」
俺の斬撃は相手の鎧を少し斬った辺りで止まった。
この刀で斬れないとなると、あいつの鎧は鉄以上の硬さ。もしくは、何らかの方法で鎧を強化しているかだ。
——だが、もし強化された鎧なら、必ず弱点というものは存在している。例えば……
グサッ
「…………!」
——前以外は強化出来ない、或いは強化をしていないかだ。
俺がさっき投げた剣の形はくの字。横に回転させながら投げたらブーベランのように戻ってくる。これを俺は利用した。
消費魔力の六割が鋭さで創造した剣はこの刀程ではないが、並の鎧なら普通に切れる。
そして、今の攻撃で相手の鎧の本当の硬さは鉄以上ではないことがわかった。
「確実に倒せないという可能性はなくなったな」
「…………」
漆黒の剣士は後に刺さった俺の剣を魔力の突風を起こして吹き飛ばした。それと同時に、漆黒の剣士の鎧にある紫のオーラのようなものが消えた。
あの紫のオーラが鎧を強化していたのだろう。というのことは、あいつは自身の鎧強化を解除したのか?
その瞬間……
「………ッ!」
「なっ!?」
漆黒の剣士が目にも留まらぬ速さで接近してきた。
一瞬にして俺の間合いに入り持っている剣で攻撃してきた。
それを俺は咄嗟に防御の構えに入ったことで攻撃を防ぐ事ができた。
「くっ……力押しでは俺の方が弱いか……!」
このままでは、俺のバランスを崩されて追撃されるのも時間の問題。そうなる前に俺は漆黒の剣士と距離をとる。
「あれは……」
離れて漆黒の剣士を見る。すると、最初は鎧にあった紫のオーラが今度は両足にあった。
「なるほど、強化スキルか」
強化スキル、体全体に使うとあまり効果を発揮しないが部分的に使うと脅威的なスキルになる。
速く動けたのも脚力を強化したためだろう。
そして、鎧も強化できたとなると付与スキルも持っているだろう。
(でも、あの紫のオーラは何だ?)
普通の強化スキルではあんなオーラは出ない。だとすると、強化スキルとはまた別のスキルなのか?
「「…………」」
お互いに睨み合いが続いている。緊迫感のある雰囲気が漂っている。
そして、その雰囲気の中で一番最初に動きを見せたのは漆黒の剣士だった。
「ハァァァッッ!」
感情のない機械的な叫び声が一帯に響く。そして、漆黒の剣士がした行動はあまりにも予想外のことだった。
「な、何!?」
「……………」
漆黒の剣士は一本ではなく
「……まさか相手が俺と同じ『創造スキル』を使ってくるとはな」
強化に付与、そして創造。
どうやら、あの漆黒の剣士との戦いはガルメに来てから戦った相手の中で一番の強敵だろう。
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