旅の始まり
「よし、準備はできた。」
今日からこの町を出て旅に出る。今、俺の準備ができた。あとはリアラの準備ができるのを待つだけだ。
「リアラー!準備できたか?」
「すみません、あと少しだけど待って下さい!」
俺が声をかけるとリアラが少し早口で返事をした。
別にそんなに急がなくてもいいのに…。
それから約五分が経過した。
「すみません、お待たせしました。」
「大丈夫、そんなに時間経ってないから。」
リアラは女性だからな。俺よりも準備に時間がかかって当然だ。実際、リアラの荷物の量は俺の二倍はあると思う。てか、この世界にもリュックサックがあったんだな。
「あの、本当に行くのですか?」
「あぁ、もう昨日のような思いはしたくない。その為に旅に出て強くなる。それに—」
「——わかってます。私がこの町にいればまた邪龍神教がいつか攻めてきますから。」
昨日、邪龍神教がこの町に攻めてきた理由が器であるリアラが目的だったからだ。このままこの町にいたらまたリアラを狙って攻めてくるだろう。リアラが町から出れば問題解決だが俺がそれを許さない。
「よし、宿の朝ごはんを食べたら寄り道してから出発するぞ。」
「はい。寄り道するのは確定なんですね…。」
「ん?何か言ったか?」
「いえ、別に何も。」
そんなことを話しながら朝ごはんを食べた。今日からしばらくこの宿のご飯を食べれなくなると考えたら少し悲しい。この宿のご飯かなり美味しいんだが…。
宿を出た俺達はとある場所に向かっていた。その場所とは…、
「お、前の嬢ちゃん達じゃないか。元気にしてたか?」
俺達をこの町まで馬車に乗せてくれたあの商人だ。
「だから、見た目はこんなんですけど俺は男ですって!」
「ハッハッハッ、元気そうで何よりだ俺っ娘の嬢ちゃん。」
うん、やっぱりこの人にはどう説明してもダメなようだ。俺の一人称が俺だから俺っ娘だと勘違いしだした。
「はぁ、今回来たのは前の約束があるからです。」
「前の約束?…あぁ、あの時のか!」
どうやら、リアラが約束について話すまでこの商人は約束のことをすっかり忘れていたようだ。そんな記憶力で本当に商売をやっていけるのだろうか?
俺達は商人の店で旅に必要なものを一通り揃える。
俺は剣を二本だけ買った。魔力が無くなって戦えないということが起きないようにするためだ。
「買ってくれてありがとよ!」
「まさかここだけで必要なものがすべて揃うとは思っていなかった…。」
「そりゃ、俺はいろんなところを旅しながら商売をしてるからな。旅で手に入れたいろんな商品をこの店で売っているだ。」
俺の世界では輸入という便利な方法があって仕入れは楽だったけど、この世界にはそんなものは無いからな。世界各地を旅して品物を揃えるしかないんだ。
そう考えるとこの商人って結構すごい人じゃないか?
「また俺が旅をしてる時に会ったらまた買ってくれよな。」
「勿論ですよ。こんなに商品が揃ってる店なんて滅多に無いですから。また会ったら遠慮なく買わせてもらいますよ。」
必要なものはすべて揃った。よし、準備もできたことだしそろそろ旅に出るとするか。
「それじゃあ、俺達はもう行きます。」
「また会えたらよろしくお願いしますね。」
「おう、まいどあり!!」
そして俺達は店を後にして町の出入口へ向かった。
町の出入口に着いた。ここを通ればもう町の外だ。
「…ついに、旅に出るんですね。」
「あぁ、俺は俺自身が強くなる為に。」
「私は、シロウさんに守られなくてもやっていく為に。」
そして、俺達は町の外に足を踏み出した。これからいかなる壁が俺達の前に立ちはだかるだろう。それを乗り越えて、俺達は強くなる!
「俺達の(私達の)旅の始まりだ(です)!!」
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