邪龍デスラと創造者の災厄
「では、今からおよそ五千年前。この地は邪龍によって支配されていました。当時は、邪龍による死亡者が相次いでいました」
邪龍……か。
それだと昔はこの世界もさぞかし大変だったんだな。
「そこに、創造スキルを持つ一人の男が現れたのです」
なるほど、その男が邪龍を倒してめでたしめでたしってことか。
しかし、それならよくあるただのハッピーエンドだ。
それじゃあ、そのハッピーエンド要素には絶対に含まれないであろう災厄って何だ?
「その男は邪龍との激戦の末、倒すことは出来ませんでしたが、無事に封印できました」
「え?倒せなかったんですか?」
「はい。災厄そのものとも言える邪龍を封印するのでやっとだったらしいです」
災厄って言う程だから恐らく、この世界の戦える人全員で立ち向かった筈だ。それでも封印するのがやっとだってことはかなりの強さを持っているという事だ。
しかし、それじゃあ邪龍の封印がいつか解けて邪龍がまた復活するんじゃ。
「邪龍を封印した男は英雄になりました。ついに邪龍の脅威が無くなったのです。そして、男はとある女性に恋をしました。銀髪の女性でした。その女性も男に恋をしておりお互いに両想いだったのです」
「へぇ、それで幸せな人生を送ったと」
「その通りですが、送ったではなく送っていたのです」
「ん?」
何だよ、その後に『しかし』が続きそうな言い方。
というか絶対幸せから絶望に変わる展開だぞ。俺の世界ではよくある展開だな。
「しかし、男が恋をしていた女性がある日、邪龍神教に誘拐されたのです」
「(やっぱり『しかし』から始まったよ)ちょっと待ってださい。その邪龍神教って何ですか?」
「え!?シロウ様、そんなことも知らないなんて貴方、実は別世界の人間じゃないんですか?」
「シロウさん、邪龍神教は知らない人はいないとまで言われる教団ですよ?今まで一体何を学んできたんですか?」
「二人とも少し言い過ぎじゃないですか!?」
受付の人とリアラに馬鹿を見る目で俺のことを見てそんなことを言ってきた。
いや、受付の人の言ってることはドンピシャで当たっているのだが少し言い過ぎではないか?
兎に角、その邪龍神教ってのはそんなにも知名度が高いのか。邪龍って名前がついてるから邪龍デスラには関係してるとは思うが。
「はぁ、仕方ないですね。邪龍神教とは、邪龍デスラを神として信仰している教団です。邪龍復活の為にはどんなことでもしてきます」
「それは、殺人や自殺することも、ですか?」
「はい、その通りです」
どうやら俺の思った以上に最低な奴らのようだ。
平気で殺人や自殺をするなんて、人の命をなんだと思ってるんだ!
「あの、邪龍神教のことも説明できたので続きを言ってもよろしいですか?」
「あ、はい。大丈夫です」
「では。その誘拐された女性は邪龍神教によって、邪龍復活の器にされたのです」
「……やっぱりか」
邪龍復活の為の器って、その女性の体は絶対邪龍の力に耐えられる筈がないと思うのだが。というか何でその女性だったのだろうか?
「何故、その女性だったのですか?」
「その女性は生まれつき魔力の量が多かったのです。そして、龍と相性がいい龍属性を持っていたからです」
魔力が多くて龍属性を持っていたから、か。
そして、たまたまその女性が英雄の男と両想いだった。英雄の男も運がないな。
「そして、器を手に入れた邪龍デスラはしばらくして封印前の力を取り戻し、自ら封印を解いたのです。あの人類の恐怖の対象だった邪龍が二十年の時を得て復活を果たしたのです」
「それは、また封印できたのか?」
「はい、英雄の男と王都の全兵士が立ち向かい何とか封印できました。しかし、それと同時に英雄の男も力尽き死んでしまったのです」
恋した女性は器になり、男は最後の力を振り絞り死亡。二人とも、とても悲しい最後だな……。
「創造スキルで皆が驚く理由がわかりましたか?」
「はい、わかりました。つまり、創造スキル持ちが現れたということは近い内にまた、邪龍が復活するのではないか……ということですよね」
「はい、その通りです」
邪龍デスラか。復活する時は、また誰かを器にするんだよな。
なら、その人を探して邪龍神教から守らないとな。
その為にもまずはレベル上げだ!そうと決まれば、さっさと冒険者登録を済ませなければ。
「すみません!冒険者登録の続きをお願いします!」
「はい。わかりました。シロウ様が邪龍復活を阻止するのなら私は精一杯応援します!」
「はい!ありがとうございます!」
絶望に器の人を邪龍神教よりも先に探し出して守るんだ!
——絶対に邪龍復活を阻止してやる!
俺は、そう強く決意した。
それよりも、最後に言わせてくれ……。
女神様、こういう大事なことは最初に言ってください!!
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