馬車の中で
「……ん?……ここは……?」
ガタゴトと揺れるところで俺は目が覚めた。
(ここは……馬車か?)
どうやら俺は何故か馬車の中いるようだ。それにしても、一体何度目の目覚めだろうか。
「あ、目が覚めたんですね!」
目が覚めたばかりの俺に突然声が掛かる。
そして、俺に声を掛けた人物の正体はあの時、俺を助けた銀髪の女性だった。声からして、おそらく俺を助けてくれた女性で間違いないだろう。
「あの時は助けてくれてありがとうございます。」
「いえ、当たり前の事をしただけですよ。それはともかく、何故あんなにロテアの森の奥にいたんですか?」
「い、いえ、少し迷ってしまいまして……」
さすがに「異世界に転移して、目が覚めたらあの森の中にいた」なんて言っても信じてくれないと思うので、適当に誤魔化しておく。
あの森はロテアの森という名前の森らしい。
しかし、この女性の言い方からして、やはり俺は森の出口とは反対側の森の奥に向かって歩いていたようだ。
「私が来たから助かったものの、あと少しでも私が貴方を助けるのが遅かったら死んでましたよ?」
「マジで助けてくれてありがとうございます」
俺の命とロテアの森から脱出させてもらった事に感謝の土下座……いや、体を動かすのが難しいので寝下座をする。
「まぁ、とりあえず自己紹介でもしましょう。お互い、名前が分からなければ会話もやりにくいですからね」
「そうですね。じゃあ、俺から名乗りますね」
何故か女性は、一瞬だけ俺の顔を見て首を傾げた。
そんなことよりも早く名乗らなければ。
「俺の名前はさk……シロウ サクラギです」
「えーと、シロウさんですね。何だか男性のような名前ですね」
「男性のようなではなく、俺は正真正銘の男性ですよ」
「え!?」
ん?何故そこで驚くんだ?別に変な事を言った覚えはないが……。
「その姿をしていて、本当に男性なんですか?」
「ん?その姿……あっ!」
そう言えば、この世界に来てから女性のような容姿だったんだ!戦闘に夢中になり過ぎて完全に忘れていた。
それと、今更気付いた事だが声のトーンも少し高くなっていて中性的になっている。
「すみません。姿は女性のようですが性別は男性です。どうしても、と言うなら証拠は見せますけど…」
「わ、わかりましたから!あなたが男性ということはわかりましたから!証拠というのは見せなくて結構です!」
「そ、そうですか」
やっぱり、この容姿は厄介だ。このやり取りをこれからもずっとしていくような気がした。
「あ、私まだ名乗っていなかったですね。私は、リア サクリドラスと言います。呼び方はお好きにどうぞ」
「わかりました。じゃあ、リアラと呼びますね」
やっとお互いの名前がわかったところでこの無駄に長かった自己紹介が終了した。
自己紹介が終わってからしばらくの時が経ち、この黙りした空気をどうかと思ったリアラが俺に話し掛けてきた。
「とりあえず敬語はやめませんか?」
「そうですね。その方がお互い話しやすいでしょうから」
ということで、敬語で話すのをお互いやめることになった。
「ところで、この馬車はどこへ向かっているんだ?」
「ええと、実は私にも詳しい目的地はわかりません」
「えぇ?!……って、敬語はやめないのか?」
「私はこの話し方が素なんです。それよりも、何故わからないかは貴方が気を失ったから急いで近くの町に行こうとして、近くの町までとしか頼んでませんもん」
「あの……その……何かすみません」
そりゃそうだ。いきなり気を失った人がいたら急いで助けようとするのは当たり前だ。俺だって、元の世界でそういう人がいたら急いで救急車を呼ぶだろう。
「ここから近くの町と言えばレジェスの町だぜ。嬢ちゃん達」
急に馬車の運転手から声が掛かる。どうやら、今の俺達の目的地はそのレジェスの町らしい。
それは兎も角……
「運転手さん」
「どうした嬢ちゃん?」
「あの、俺女じゃなくて男なんですけど。」
「……フッハッハッハ!いや、面白いことを言うね嬢ちゃん!」
本当の事を話したら少し間を置いて大爆笑された。
というか、まだ嬢ちゃんと呼ぶ限り俺が男だということを信じてないな!
「あの、レジェスの町っでどんな町なんですか?」
リアラが運転手に向かって声を掛けた。丁度、俺も知りたかったことなので話を聞いておく。
「レジェスの町っていうのは、数多い町の中で最も安全な町と言われている有名な町だ」
「へー。何故ですか?」
「そりゃ、町の周りには低レベルの魔物しかいないからだ。だからレジェスの町には、冒険者になりたての人達がたくさん集まっているんだ。この辺りでは誰も知らない人がいないほど有名なんだが、知らなかったのか?」
「すみません。田舎から出てきたばかりですから」
レジェスの町か。運転手とリアラの会話を聞く限り、ゲームで言う最初の町ってところか?
レベルが低い今の俺にとっては丁度いい町かもしれないな。
ところで、今の俺のステータスはどうなっているんだ?
シロウ サクラギ
HP正常 MP106/106
Lv6 次のLvまで後855exp
装備 皮の鎧 皮の小手 皮のブーツ
装備武器 なし
力 34
耐久 30
俊敏 25
幸運 1
スキル
・創造Lv2 ・不運 ・高速思考Lv2
称号
異世界からの旅人 男の娘
レベルアップによる変更点
・創造Lv2 消費MP10〜50
・高速思考Lv2 消費MP 5秒につきMP5
お、レベルが6になってるじゃないか!
でも、狼を20体ほど倒しただけではやっぱりこれくらいしか上がらないか……。
でも、スキルのレベルが上がって創造は消費魔力の量が増えてより強い剣が作れるようになったな。
高速思考は…必要最低限以外は使わないかな。
そして、やっぱり幸運値は上がらない。一体いつになったら増えるのだろうか。
「まぁ、町に着くまで大人しく待っているか」
そして、俺は町に着くまでの間、気長に待つことにした。
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