有象無象の空想~掌編集~

白金 鉄

ケーキ屋の問題

四人のケーキ職人がいた。

一人、リーダーでありまとめ役である店長

一人、生地作りが一番うまい老いた男

一人、クリーム作りが一番うまい垂れ眼の男

一人、トッピングが一番うまい太った男

彼らは街の片隅に店を構えケーキ屋を営んでいる。


ある日、客からクレームが来た。

客曰く、注文したケーキに問題があるのだと。

店長は早速、問題解決に動く、そして知る、三人の問題を・・・


老いた男は卵の殻が生地に混入した事を気が付かず調理

原因は『老眼』だ

垂れ眼の男はうっかりクリームの材料を間違えて調理

原因は『寝不足』だ

太った男に至ってはトッピングすらしていない

原因は『やる気が無かった』だ


あんまりな問題に店長は憤怒を露わにし、三人に厳しい指導を行う。

・・・が、それでは間に合わなかった、遅すぎた。




ケーキ屋の問題は記事にされ、瞬く間にそれが世間に配られる。

そして瞬く間にケーキ屋は熱い視線に焼かれ、店長はその代表として一面を飾る。

結局、店長はケーキ屋を閉店せざる負えなくなり人知れず息を引き取るのだった。


そして残った三人。この反省と後悔をバネにすると誓い合い、批判を真摯に受け止め合い、互いを支え合い・・・




何とケーキ屋は再び立ち上がる!


最初こそ疑問の声があった物の三人が汚名返上のために修行し続けたケーキは美しく何より美味であり、その反響か今度は明るい話題の記事を作ってもらいあっという間に世間に知れ渡たった。


老いた男「人生で最高の瞬間だ!」

垂れ眼の男「辛い日々が報われた!」

太った男「俺たちの時代が来た!」


歓喜に震える三人、それを見て感動する一人の客人。

その客はあのクレーム客だった。

クレーム客は三人にこう告げる




「あのクレームは実は『嘘』だったんだけど、まさかこんな事になるなんて思いもしなかったよ!!」

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