Light Cigarette
樋之上 恋
一本目 扇風機は羽付きがいい
暗闇の中で淡い光が灯る。その光は細長い白棒へと移り、直ぐに消えた。やがて、光の灯った白棒からゆらゆらと煙が躍り出る。光が煙を照らし、より妖艶に闇の中で煙を踊らせた。
さらに、白い煙が勢いよく躍り出る。
視界が、煙によって一気に埋め尽くされる。
ユラユラと...ユラユラと...
声が聞こえる。虫たちの囁く声が。遠くのバイパスを走る車たちの音が。忙しなく。そして静かに。そして、僅かに咳き込む音。
また、煙が勢いよく躍り出る。中指ほど白棒は、いつの間にか親指ほどに短くなっていた。
最後の煙を踊りだし、ベランダの柵に白棒の灯りを押し付ける。
グリグリと...グリグリと...
部屋の中を見渡すと、しまった...風で煙が侵入してきていた。煙たちは、秩序を乱して自由奔放に辺りに舞っている。
まずいと思い羽根付き扇風機で無秩序な煙たちを急いで退散させる。
ふと、羽付き扇風機の横の羽根なし扇風機が目に入る。が、直ぐに目をそらす。
彼は実に役に立たない。羽が無いくせに喚くわ言うことは聞かないわで、羽根なしというより能無し扇風機と言ったところだ。
やはり、夏は羽根付き扇風機に限る。
それに同意するように、煙たちは嬉々として散っていった。
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