4話

4-1

 年末が迫っていた。もう何日もしない内に師走になる。無事に年末年始を休む為に僕は必死に仕事を片付けていた。

 窓の外を見るとちらちらと白い物が真っ黒い空から落ちてきていて、帰省した際にさせられる実家の雪かきを思って溜息を吐いた。

 異常気象と云うやつだろうか。ここ数年、降雪量が随分増えた様に思う。いや、降雪量自体はそう変わっていないのかも知れない。季節にずれが生じている、と云う方が、しっくりきた。

 大学時代のある年、十一月半ばに祖父が亡くなった。火葬の日、火葬場の外にはすっかり雪が積もっていたし、通夜の夜も雪が降っていた覚えがある。けれど今年は勿論この数年は師走の頃になって漸く雪が降り出すと云った状態だった。そして今までより少し短くなった冬に、その短くなった分を補おうとするかの様に、どっさりと雪が降り積もるのだ。

 あの年は未だ、師走前に雪が積もっていた。大学に入学し、文芸部に所属して、そこで出会った先輩に恋をした年。彼女が人を探している事を知り、それを手伝う内に不思議な人達に出会った年。

 あの年の、丁度今頃の話だ。

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