第2話



シュノーケルは嫌いだ。

息が苦しいし

ゴム臭い。

潜って、勢いよく海水を吹き出すのも

上手くできない。

なにより

潜れない。



はるか底のほうに

フグが見える。

深すぎて近づけない。

水深5メートルくらいだろうか。

急に目の前に60cmくらいのボラが現れて

びっくりして溺れそうになる。

陸で見るとそうでもないけど

海中で出くわすと

とても大きく感じる。



深いところは綺麗だけど

潜れないし

万が一サメとか来たら怖いので

浅瀬に移動する。

遠浅の砂地が続く。

腰ぐらいの深さで少し泳ぐと

またボラが現れた。

ヤスを目一杯引いて放つ。

やっぱり当たらない。


ボラに逃げられ

その先を見やると

砂が舞い上がり

煙る水の先に

陸では見られないほど巨大な岩影が

黒く浮かぶ。


寒気がするほどの

その佇まいに

ここはオマエたちの来るところではないと

言われたような気がして

急いで戻る。



息を切らして陸にあがる。

振り返ると

岩は水面から少し出ているだけだった。

あの不気味さは

欠片もなかった。




19の夏

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る