推敲を終えて(前半)
推敲させていただいた原作はこちらになります!
「異世界の人類を滅ぼす方法を答えよ(配点100)」
作家:忠臣蔵 様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885333901
※
あとがきを2回に分けました。
前回の推敲で書き方や意識が変わったせいか、わりとスムーズに推敲し終えました。
ちゃんと推敲できているだろうか(汗
こちらの原作は、ぴ〜とるいじ様と和泉ユウキ様が先に推敲されていますが、現在その原作は改稿され、改稿後の第一話を推敲させて頂きました。
改稿前の原文は未読ですが、お二方の推敲作を拝読し、説明から入る導入から、改稿後は台詞で始まる導入になっているようだと、推測します。
始めは悩みました。
改稿の初読の印象は、誤解を恐れずに言えば、もったいない、だったからです。(上から目線ダヨ)これは、書いてあるのに拾いにくい部分が多い気がしたためです。
それで、もっと見せるように、伝わるように、構成に手をつけて、台詞回しから、推敲を始めたのですが、この話、立体的に奥行きを出して、リアルにすればいいというものではない、と印象が崩れた時点で5行ほどでストップ。
白紙。
初読でクールと感じたものは、読み込むほどにドライな印象に変わりました。
ブラックジョークとシュール過ぎるのは、ちょっと苦手です。風刺は好物ですが。微妙な違いが実は大きく影響するので、改めて、変えないことに重点を置きました。
このテイスト好みの人にとってツボがどこか、理解していなかったからです。
わからないなりに、好き嫌いがはっきり分かれる系統なのかな、と思う一方で、作者様は思考を言葉にするのが慣れていらっしゃるようで、文字を追うのは楽でした。
今回は、異世界転移を扱うために、ライトな書き方をしているのかもしれません。
他の作品では、詩を物語にされるような、文学やテーマの気配が致します。
推敲について。
難しかったのは、温度です。物語の温度、感情の温度。一番、決断に慎重になった部分でした。
一人称の肝になる主人公の語りが、猛っていても、全体の文章には熱がないように感じました。前後のつながりが見えない状態からテンションが変わるせいかと思いますが、ブラック労働で疲弊して、消耗した精神が常に不均衡で、簡単に露わになるし、唐突に理性的になる機微が、わかる人にはすごく刺さりそうで、何のこつかわからない人には独り語りというスタイル上、何が彼の中で起こっているのか理解できないまま、場面が突き進んでいくのではないかという感触。
追い詰められてる人の視点を味わうなら、これが一番なんだと思いますー。わけがわからないのもまた味となる、と。
推敲するのでね、わからないとやりようがないので、主人公の心理状態を把握し、さらにそれを表出させるかどうか、検討しました。わかるように温度を持たすと、話の空気が変わっちゃうので、熱くできない分、仕込めるところに毒を撒いて主人公の台詞やキャラを盛り上げようと頑張りました。
チキンな最後の台詞と落差をつけたかったです。
やってみたら、毒はいくら含ませても大丈夫な感じ。
具体的な推敲は。
独特の言い回しに推敲が組み込めないので、原文をベースにしながらも、印象を損なう恐れはありましたが、文章を簡単な言い方に変えました。
会話の内容が単純に進むよう、中身の順番もいじっています。
記憶にある限り、王子様が眼鏡かけてることがわかるのは、この冒頭だけだったので、メガネかけてんだよ!となぜか強調しようと思い、しつこく書きました。トップに持って来たのもそのせいで、毛むくじゃらの指のインパクトなら、一文目でもいいじゃないか、浮かんだ映像ではツルではなく真ん中のとこを押し上げてたので、これも勝手に変更してしまっています。
むしろ手の方がグローブのイメージだったので、耳はミトンにしました。ライオンの仕草は調べきれなかったので、猫で代用。喜んだり、甘えたり、獲物を狙う時のウズウズしてる感じを参考に、耳と尻尾の動きについて修正したり。
本文で着ぐるみに対する主人公の食い下がり方がしつこかったので、影響されて、どうしても着ぐるみって言いたくなったのは、私の嗜好です。すみません。
「殺すぞ」と「胸いっぱい」、反する言葉で、同じ一文にあるのがいいなと思ったのですが、ここは、物騒な言葉がさらっと吐かれたインパクトの方が強く、そう簡単にスルーされてなるものか、と思いました。そのため、毒を吐くハードルが下がるよう、冒頭あたりから少し主人公には憎まれ口を叩いてもらっています。
「聞くに堪えかねて」も、もう少しひっかかりをつけようと思いました。
直前の台詞の王子様は、むしろ好感があり聞くに耐えかねる印象がうすいので、ここは読み解くのが一瞬むずかしい。
当たっているかはわかりませんが、一方的な会話の中身やこれまでの冷遇の積み重ね、精神的な負担の限界、このあたりが理由で、主人公の会話自体に対する集中力が切れた、と表現することにしました。状況を投げたことを、「出口を求めて」で伝えるようにしてみてます。
もう一つ、深読みしなければならなかった場所があります。
主人公が王子の瞳孔を見て「気を紛らわす」ところ。
さっきは何が彼を聞きたくない状態にさせたか、判然としませんでした。
次は何から気を紛らわせたいのか、そして、なぜ気を紛らわせる必要があるのかが、推敲には必要でした。
具体的な理由。
話としては見えなくていいのかもしれないそれを、書くか書かないか考えるために、探しました。
たぶんコレ、と思うものを「書こう」と決め、浮き彫りにしています。書いてしまった手前、フォローとして、前段階から主人公の焦燥をあおって、だんだんとイラついて来ている風にしています。こう引っぱって来ると、流れができてしまうので、この後で決着をつけるために「現実逃避はここまでだ」と言わせる形となりました。
この部分、原文では「だめだもうごまかせない」の一言で、主人公は何かを、決断したっぽいのがわかります。
一読した感じでは、ここまで何をごまかして来たのか、判然としない所なのですが、感覚としてわかる人には説明は不要な気がします。
推敲では前述の「気を紛らわす」はここにつながるんだろう、と考え、同じ内容を指しているということで着地しました。
他、推敲した部位。
文机は座卓のイメージが強いので、椅子ならばと書斎机にしたり。
気づけばあちこちに映画タイトルが。出てきた映画を少し調べ、古いせいで少しマイナー気味だったので、「?」が増えて読み飛ばして、意味が通らなくなると怖いな、と思ったので、タイトルを伏せてニュアンスで通したりしました。
台詞について。
王子様はほとんど反応しないカテキョ相手に、一人で検討しながら話しているせいか、兵力侵攻は最後の手だと思うの、と最初に言ったあと、兵器を使うことを提案しその候補の多さに迷った挙句、でも、兵力は最後の手だと思うの! ともう一回戻って来ます。
この場面は、本文の6話の毒ガスの話題に続いて、そこでは毒ガス以外の話題が出て来ないので、書いてるうちにそうなっただけかな? と思い、ストレートな理論展開にしてみています。
あとは、われわれと何度か大義名分を吠える王子様くんに、いっそ自分で背負ってもらった方が、意気込みが伝わるかなと考え、志を魔族の連帯責任として押しつける構図にすこーし変更。ヘラジカのニンゲンを侮っている感じから、王子様以外の魔族はニンゲンのことをなんとも思ってなさそうなので、王子くんが一人で言い張っている感を出しておこうと思いました。
まとめ?
最後まで主人公のキャラをどこまで勝手に打ち出すかねー、と考え考え進めました。
原作の印象の主人公は、終始冷静かつソフト、気がつくと思考がナナメったり、急に神経が崩壊しますが、ハリボテ的な立て直しも早いです。
すでにそうした状況が原作ベースにあるので、推敲では、そこに内実が嵐に見舞われてガッタガッタになってるところや、特に何も出来ないけど頭にきてるところを、きっちりと押し出してみました。
モノローグの言動がねじれているところを、整理したり強調したりして、混乱ぶりに拍車がかかればいいなと画策。
着ぐるみだと信じたい願望のかたわら、「どうもライオンじゃないところがある」と言ってる矛盾。(これは私の推敲)
肉球も、肉球のついた足で絨毯を踏んでるという描写のあとに、主人公が肉球ってあったっけ? は書き損じなのか混乱なのかきわどいですね。(これは原作)
原作では「そういえばもう殺されてる」と、この後に殺伐としたことを言っているので、さらに「肉球のことは誰かに尋ねる」とわけのわからないことを言ってみています。
うーん、伝わるかなぁ。
主人公の地雷を、知らないところで踏みまくっている魔族たちですが、主人公の琴線がどこにあるのかは、魔族同様に読者にもわからないところだ、と思いました。(きっとわかる人にはわかる)
心情描写は少なく、主人公の言葉から推し量るしかないかなと思います。主人公の混乱ぶりや葛藤が伝わるかどうか、紙一重な気がすると思いました。
ギリギリ正常な判断ができているようで、そうでもないあたりが書けていればいいなぁ、と思います。
自分では行間を妄想で埋め過ぎたのでは、と不安も残ります。
今回も力を入れたのは、原作で言及していない、心理を描くことではなく、各場面を理解することです。
その場その場で、主観の描写から落ちる客観的な様子を考えて、この1話の中で主人公の行動が結果的に線になるよう、彼が何かに向けて行動したように見えるような補足をしました。
度々、この乾いた笑いに耐えられなくて、推敲しながら突っ込ませてくれ! と思いましたが、そういうギャグではないのでこらえて。(語気に出てるかも)
私がやると隙あらば愛嬌や間抜けさが顔を出してしまい、申し訳ないです。(パーティメガネともっふもっふあたり)
以上でございます。
主人公が、おそらく作者様の生理とほぼ一致しているため、どこで変化するのか、どっちの方向に心が向くかは、作者の反射次第という気がしました。
推敲としては読み解くのでせいいっぱいでしたが、やってみて一人称でも、心理状態の変化の機微は描き出せそうだと思いました。
それを書く必要があるかは、また別の話です。
主体性のなさ、主体のはっきりしない部分が、この話の作風とも言えると思うのですが、そうしてあはれな主人公と物語全体に蔓延する残酷さを楽しむのがこの話の味わいなのですかねぇ。
などと思います。
※
改造を終えて(後半)にちょっぴり続く。
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