第45話
「無事かエレーナ」
「ランスロット様!!」
突き飛ばしたようになってしまったが、テイラーが役目を果たしてくれたようだ。ぐしゃりと顔を歪めたエレーナはいてもたっても居られないと言ったようにすぐランスロットに駆け寄るために足を踏み出した。その瞬間ギラリとランスロットの瞳が揺らぐ。
「エレーナ来るな!!」
「え?」
「ロイ!すぐにイーダを....!!」
「師団長!!?」
ロイに向けた指示は最後まで聞き遂げられる事はなかった。
グラリ────
エレーナの目の前でランスロットの体が横に傾く。声に反応したロイが見たのは、ランスロットが床に崩れ落ちるのその瞬間だった。
「師団長!!」
「ランスロット様!」
「旦那様!!」
カランとランスロットの仮面が外れた。仮面で隠れていた顔は血の気が引いていて異常事態である事が容易に理解できた。
それぞれがランスロットの元へ駆け寄る。辛うじて膝をついてその場に蹲るに留まったランスロットだったが、駆け寄ってきた人達を「来るな」と制した。
「....毒だ。近寄るな。触るな。」
「....!!すぐに解毒剤の在りかを聞き出してきます」
意味を理解したロイはそのままイーダの向かった方へ駆け出す。その短い時間の中でランスロットの顔はどんどんと青ざめていく。エレーナはオロオロとランスロットのそばにきて膝を折った。
「ランスロット様....」
「大丈夫かエレーナ」
「....っ‼︎!」
ランスロットの微笑みに我慢していた涙がぐわりと湧き上がってきた。この人はどうしてこんなにも優しいのだろうか。いま一番の重傷はランスロット自身なのに、エレーナの事ばかり気にかけてくれるのだ。エレーナは涙を拭うとビリビリとドレスの裾を引き裂いた。
「エレ....」
「テイラー!急いでお父様に!...ダダイ・ラド・リズ・ソフィアに連絡をとって優秀な医師の招集要請を!あとソフィアの屋敷から無くなっている毒薬を捜索しなさい!」
「!!」
「キース!!」
「わかってる...おい意識は出来るだけ持ってかれないようにしてろ」
呆気に取られるランスロットとテイラーを横目に、エレーナは破いた裾をキースに渡す。キースはそれをランスロットの上腕に力強く結びつけた。顔を歪めたランスロットを一瞥したあと近くにいた団員に声をかけた。
「おい!そこの!!すぐそこの店から手袋!あと薬草をありったけ貰ってこい!!エレ!!」
「うん!...ランスロット様はこちらに横になってください。出来るだけ心を落ち着かせて、慌てないで」
テキパキと指示を出す2人。グラグラと視界が歪み始めたランスロットは必死に意識を手放さないようにするのが精一杯だった。
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