第15話
「最初はわからなかったわキース。あなた大きくなったわね」
「エレは変わらないな!相変わらずちっこくて可愛い」
「まぁ!」
クルクルとエレーナを回しそれが満足すると、今度はぎゅうっとエレーナを抱きしめた。
「まてまてまてまて!!」
「あ"ぁ!?」
ランスロットはすかさず2人の間に割って入る。エレーナに見せる満面の笑みと人懐っこさを消し去り、近寄ってきたランスロットに敵対心を見せる。解せない。
ランスロットは男からエレーナを引き剥がすとその腕に抱き入れた。
「エレーナ。こいつは誰だ?知り合いか?」
「キースベルト・ロドワット。エレの幼馴染だ」
エレーナの代わりにキースベルトが応える。
キースベルトの父は優秀な医者で、エレーナの父であるダダイの親友だったそうだ。よくソフィア家にも遊びに来ていた。キースベルトはエレーナの母親が亡くなった時期に「もっと多くの技術を身につけてソフィアの医学を発展したい」と決断し、家族総出でナカルタ国へ向かったという。
そういえば、以前王都へ出かけた際にエレーナをエレと愛称でよぶ幼馴染がいると聞いた。まさか男だったとは思わなかったが。
「....聞いたことがある。若くて腕の立つ騎士がいると。確かそいつの家名がロドワッド」
「俺はナカルタ国で騎士として名を馳せてきた。貴族ではないから階級は望めないが腕には自信がある」
フンと鼻で笑うキースベルトに苛立ちが募る。先程からバカにされすぎてはいないだろうか。
「そしてエレへの想いもだ」
「.....は?」
聞き捨てならない言葉が聞こえた。ランスロットの周りの空気が一瞬にして冷える。だが、それに動じないのはキースベルトだ。
キースベルトはひと睨みした後エレーナに顔を向ける。ランスロットの腕の中にいるエレーナの手をそっと握った。
「手が冷えてる。その笑い方をしている時にこの冷え。この脈拍。抱きしめた時の体の熱さ。....エレ。お前熱あるだろ」
「...熱だと?」
「えっと....」
「目を逸らすなよエレ。....熱が出て3日って所か。いつもの薬は?」
「.......もう、飲んでいないの」
「は?あれは頓服じゃねーだろ」
キースベルトは近くで見守っていたテイラーに目を向けるとすぐに数種類の薬の名前を口にし、それを手に入れてくるように指示をする。次はティナだ。ティナにはエレーナを寝かせるように指示を出した。
使用人達がバタバタと慌てだす。ランスロットはその様子を呆然と見ていた。
「エレ。とりあえず部屋で休め。絶対安静だ」
「....うん。ごめんキース」
「なに。身のうちに秘めてしまうのは昔からお前や、...エリアナ様の癖だ」
キースベルトの言葉にエレーナは困ったように笑った。だがその笑い方は、ランスロットが今まで見た笑顔とは違う。ランスロットは頭を殴られたような衝撃で動けなかった。
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