第4話
今日は久しぶりにランスロットが屋敷に戻ってきた。数日前に遠征が終わり、その後も事後処理などで深夜に着替えを取りに来るだけで騎士団庁舎に篭りきりだったようだ。
久しぶりのランスロットは少し疲れがあるようだったが、エレーナが執務室に入室すると優しく目を細め迎えいれてくれた。
「エレーナ。おいで」
「お仕事お疲れ様でした」
呼ばれるままエレーナはランスロットの腕の中でもに飛び込む。それに対してランスロットもエレーナに腕を回す。これが最近の2人のやりとりだ。
「中々会えなくてすまないな」
「それよりも、ランスロット様が体調を壊さないか心配です」
「君と会えるなら体調を壊して屋敷に引き篭っても構わないが」
「...まぁ!」
クスクスと笑うエレーナは冗談と捉えたか、ランスロットとしては本気だ。もちろん体を壊したら心配させるだけで無く、仕事も溜まるからごめん被りたいが、本気でしんどくなったら考える一手ではある。
その時、ふとテイラーに報告されていた事を思い出し手を取った。
「エレーナ。こちらにきてくれ」
「はい...?」
執務室を出て数分。
同じ階だが、屋敷の角部屋に連れてこられた。ここは足を踏み入れた事がない。エレーナはきょとんと首を傾ける。ランスロットは躊躇する様子もなく部屋のドアを開けた。
「わぁ...!」
扉を開けるの見事な部屋があった。
ソファやベッド、ライトなど様々な調度品は新調されたばかりのようでキラキラ輝いている。
「遅くなってしまったが、君の部屋だ」
「私の?」
でも、エレーナの部屋は既にある。それに現在結婚式のために色々入り用だ。これ以上何か貰う事は憚れる。そんなエレーナの思惑を正確に理解したランスロットは首を振った。
「ここは本来、この屋敷の女主人の部屋だ。お前が今いる部屋は本来客室。だからこの部屋はエレーナの本当の私室になる。」
ここに来た当初は婚約者候補と言う名の"客人"だったエレーナ。信用も信頼もない当初、用意された部屋は客室だった。もちろんソフィア家に居た頃より豪華な部屋や生活だった。だが、今後エレーナはこの家の屋敷の女主人にならねばならないのだ。
そしてここはランスロットが用意してくれたエレーナの部屋。
「エレーナの物だと思うと、私もティム達も妥協できず、ついついこだわってしまった」
仮面を外したランスロットの顔はどこか照れくさそうで、エレーナはその光景が脳裏によぎりふふっと笑ってしまう。
「ありがとうございます。嬉しいです」
エレーナの笑顔を見てホッと胸を撫で下ろすランスロット。この顔を見たくて水面下で動いてきたのだから。
ランスロットはそのままエレーナに唇を重ねた。
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