第5話
ピクリと体を揺らしたエレーナ。すぐに顔を真っ赤にさせたが、拒否の意思表示は見られない。
ランスロットはエレーナの顎に手を添えて親指でそっと下唇をなぞった。
「エレーナ」
「...はい」
甘い雰囲気が2人を包む。
「....少しだけ先に進んでも構わないか?」
返事を待たずにランスロットは再びエレーナの唇に自分のそれを押し当てる。
顎に添えていた親指に少しだけ力をいれて口を開かせるといつも以上に深くエレーナを貪った。
初めての感覚に身を固くするエレーナの背をトントンと優しく叩くと、ゆっくりと肩の力が抜けていくのがわかる。それが嬉しくて、ランスロットはさらに彼女を求めた。
「あっ...」
「おっと....!」
しばらくして突然エレーナがズルリと床にヘタリ込む。ランスロットの腕によって辛うじて床への衝撃は免れたが彼女は荒くなった息をそのままに目を白黒させた。
「ち....力が.....」
「....腰が抜けたんだな」
顔を真っ赤にさせてコクコク頷くその反応が可愛くて嬉しくてたまらなくて、ランスロットは優しく微笑んだ。軽々とエレーナを抱き上げるとゆっくりと新調されたベッドへ彼女を運ぶ。
「ラ、ランスロット様!!」
「大丈夫。もうこれ以上はしない」
「今日は」と小さく呟かれたランスロットの声をエレーナは聞き逃さなかった。
ゆっくりと寝台に寝かされたエレーナに、ランスロットは覆い被さり再び口づけを開始する。
「ランスロット様!」
「だから、これ以上はしないと言ったろう?」
「!!?」
にやりと笑うランスロット。
"これ以上"の意味が違う!!そう抗議しようとした声もランスロットによって封じられる。時折甘い声が溢れるエレーナにランスロットは目を細めた。
「あまり無理はしないように」
「...え?」
息も切れ切れになったエレーナにランスロットは声をかける。
「茶会の招待や、貴族教育、ダンスレッスン色々気を張っていると聞いている。だが、俺はそんなもののせいで貴方の笑顔が失われてしまうのは避けたい」
そっと頭に手をおいてひと撫でしたランスロットは、ようやくエレーナの上から体を退ける。徐にポケットを探りそれを取り出した。
「エレーナこれを」
「これは?」
エレーナの手に落とされたのは鍵だ。ランスロットは視線で部屋内にある扉に目配せする。
「そこの鍵だ。俺の寝室と繋がっている。鍵はこちらからしかかけられないからしっかり掛けておきなさい。」
ランスロットの言葉によくわからなぬままコクリと頷いた。
「エレーナ。仕事ばかりで申し訳ないが、俺も出来る限り隣の寝室で眠るようにする。お前はここから俺の寝室へいつでも入ってきていい。例えば、疲れた時。声が聞きたい時。いつでも構わない。顔を見るだけでもいい。おやすみを言うためだけでもいい。お前にはその権利がある。だがその時は覚悟しておけ。お前の望み通り、...いやそれ以上に存分に甘やかしてやる」
熱くなった顔でコクコクと頷くと、ランスロットは納得したように微笑んだ。
エレーナに布団をかけ「おやすみ」とおでこにキスをする。
「ティナに声を掛けておくから入り用な物は持ってくるよう伝えるといい。ちゃんとした移動は日のある時にしなさい。」
布団から降りるとそのままスタスタと扉の方へ向かう。ドアノブに手を掛けた時にくるりとこちらを向いた。
「結婚したらその鍵は外すつもりだ。その時も覚悟するように」
「....ッ!!」
その後エレーナは、部屋に訪れたティナに声が出をかけられるまでベッドから動けなかった。
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