第74話
「しかし!ソフィア家の借金はどうするんだ!!エレーナ嬢は借金の担保として私の元へソフィア家が寄越した!」
「借金についてですが」
ついには叫び出したシフォンにすかさずロイが話に割って入る。手に持っているのは先刻ソフィア家で提示した書類の一部だ。
「ティール殿によるソフィア家の借金は、クレメンス家が引き受ける事になりました。こちらが、その書類になります。第2騎士団副師団長ロイ・ハーツが証人となります。」
「また、今の発言はシフォニア王国で禁止されている人身売買に触れていると思われます」
メニエルが告げたのは、現国王が即位した時に取り決められた人権保護の1つの法律。人身売買は法によって禁止されているのだ。貴族通しの取り組めによる政略結婚や婚約に関してはギリギリグレーゾーンな部分は多々あるのだが、シフォンの発した"借金の担保"という発言は言うまでもなくアウトだ。自分の失言にシフォンはさらに顔を青くしたが時すでに遅し、一度口から出た言葉は間取りはしない。ランスロットはさらに追い討ちをかける。
「今回のエレーナ・ラド・ソフィアの失踪による調査にあたって表面化したシフォン・ネロ・リス・ティール、お前のこれまでの悪事はかなり酷いものだった。第2騎士団師団長として目を瞑る訳にもいかないため宮廷誓約ついでにバルサルト殿下に報告済みだ」
「!!」
実際には失踪する前からソフィア家身辺調査によってあぶりだした悪事だったが、ランスロットは飄々と
「私は冷酷非道の変人軍人"ランスロット・リズ・ド・クレメンス"だ。おのれの野心のためならなんでも使う。たとえそれが王族でもな。そして、俺の前に立ち塞がった物に対しては敬意を持って塵も残らんように返り討ちにしてやる」
これがロイの言う"情に熱い"男の守り方である。だからこそこの若さで師団長にまで上り詰めたと言ってもいい。家系というものもあるが全てはランスロットの技量だ。
(殿下のお気に入りっていうのもでかいんだよなぁ)
とロイは心の中で思うのだが、やれ夜会だ、やれ諜報だと事あるごとに頼られ振り回されるため本人としてはあまり良い事と捉えていないようだが。そんな事を思いつつロイは
「それではご同行願えますか?色々お聞きしたいこともありますので。ああ、そちらのお二人も事情をお聞かせくださいね」
にっこりと微笑むロイに3人はガクリと肩を落とした。後方の2人がどこまで加担しているかわからないが余罪など追求するのが筋だろう。ランスロットは階段から降りてくる3人を腕組みをしながら見つめる。横を通り過ぎるとき、悔しそうな顔をしたシフォンがギラリと目を光らせた。
「覚えていろ、ランスロット。」
「....貴方が請け負ったソフィア家の借金は明日にでも屋敷に送り届けてやろう」
唸り声のような恨み節を唱えるが、ランスロットはどこ吹く風で見送る。こんな悪態など日常茶飯事だからだいちいち気にしていては体も心も保たない。それよりも。
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