夢の中の君と

ぷっつぷ

プロローグ

プロローグ

 理不尽に襲いかかる無情な死への恐怖と、体をじわりと押し潰してくるかのような重苦しい雰囲気に包まれた陰鬱な城――魔王城。そこに、暗闇を打ち消す希望の光が射し込んだ。

 灯火さえ受け付けぬ漆黒の柱がずらりと並んだ魔王城の大廊下に、眩い光魔法が波の如く押し寄せる。光魔法は、大廊下で武器を構えた魔物たちを包み込み、彼らを覆っていた魔法障壁を砕いた。


 直後、数多の銃声が魔物たちの耳をつんざき、数多の銃弾が魔物たちの体を貫く。魔物たちは次々と膝をつき、その場に倒れ込み、再び起き上がる力さえも失った。


 岩のように硬く頑丈な体を持つ魔物たちを、光魔法と銃弾でいとも容易く撃破していく一団。その先頭に立つ男は、背丈ほどもある杖を片手に、恐怖を払い陰鬱な闇を明るく塗り替えていく。


「勇者どもめ……こんなところまで……!」


「強すぎる……我らでは敵わぬ相手だというのか!?」


「魔王様……申し訳ありませぬ……!」


 人間界の希望、人間界の救世主である勇者に、魔物たちは太刀打ちできない。勇者一行は魔物たちを押し退け、魔王城の大廊下を進んで行った。

 魔物たちの命を奪うことが勇者の目的ではない。魔王を倒し、世界を守るのが勇者の目的だ。だからこそ勇者一行は魔物たちを押し退け、大廊下を進み、巨大な扉の前に立つ。


 大廊下の終わりを告げる巨大な鉄の扉は、見上げてはじめて全体像が把握できるという大きさ。見た目からして、武器や兵器を使っても扉を破壊することは難しいだろう。何より、扉から滲み出してくる異様な魔力には、さすがに身構えてしまう。


「魔王様の仰る通りだった……。勇者ども……貴様らはついにここまで来た……」


 扉を見上げていると、背後で床を這う一体の魔物が、悔しさに溢れる言葉を放った。紳士服のような格好をしたその魔物は、おそらく魔王の側近であろう。彼は勇者一行を睨みつけ、一転して怪しい笑みを浮かべた。


「貴様らの努力は、徒労に終わるのだ! 貴様らが魔王様を倒すことはできぬ! 不死身の魔王様を、貴様らのような脆弱な人間が倒すことはできぬ!」


 魔王の側近が言い放つその言葉が、決して虚勢のようなものでないのは、彼の血走った目を見れば分かる。

 なぜ側近がそこまでの確信を持てたのか。それを知ることはできなかった。側近はナイフで自らの喉を掻き切り、命を絶ってしまったのだから。


 ただ、扉から滲み出る魔力を感じ取れば、側近の確信と魔王の狙いが、おぼろげながら見えてくる。あとは魔王と直接対峙することで、魔王の狙いを理解することができるだろう。

 勇者は警戒心を崩すことなく、巨大な扉に手をかけた。扉はその巨大さとは裏腹に、ゆっくりと、しかしやすやすと開いていく。


 扉の先には、生と死すらも超越した虚無を纏う魔王が待ち構えていた。勇者は霧のような推測を確信に変え、杖を振り上げる。

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