第412話 年の暮れ。21年さようなら、もう戻らない日々へ。
チックタック、チックタック……。
エアコンの送風音と、雨戸を枝がひっかく音。
おそれを知らぬわたくしが、午後4時過ぎに年越しそばをおかわりして今。
胃が気持ち悪いです。
そばだけじゃおなかがすくからと、レンジでチンするからあげを一袋全部食べた。
ら、なんか圧迫感。
なんか苦しい。
と言っても別に晩御飯を早めに食べたからといっておかしいわけではない。
今日の朝ごはんは午前4時過ぎだったのだから。
つけくわえれば、一晩徹夜で大晦日の大掃除をしていた。
家族は田舎に行ってしまい、そこで新年会をしてくるというからわたくしは広い家をたった一人で掃除したのだ。
当然いつもよりおなかは減るし、眠いしで一日がぐだぐだだ。
猫には餌をやらねばならないし、食事は自分で用意しなくてはならないし、おちおち寝てもいられない。
自然と楽なネットの世界に落ち着くわけだが……。
今日に限って(いや年末だから)通知欄がしんと静まり返っている。
こうしてつれづれなるままに、かきつづってもだれも読んではくれまい。
いいのさ、ふんふん! わたくしは孤独なのさ。
男とセックスするのが嫌さに誰ともつきあわず、結婚するのが嫌さに彼氏を作らず、そうして生きてきたのだ。
同じことだって? ちょっと違う。
男とセックスするのが嫌だから彼氏を作らないんじゃないし、結婚するのが嫌でだれともつきあわないんじゃない。
前者はノットイコールだし、後者もノットイコール。
誰かとつきあうと、必ず「異性とのセックス」を問題にされる。
なぜかそう。
異性とセックスしないと異常扱いされる。
だから、だれともつきあわないし、つきあいたくない。
彼氏をつくると、遊びというわけにもいかないのでいつか結婚しなくちゃいけない。
相手の人生に責任をもたなくちゃいけない。
もたせてくれるかはわからないけれども、相手がわたくしと一緒にいる間は、その相手は自分の時間を削ってわたくしといるのだ。
相手に相応の対価を支払わずにつきあったり彼氏を作ったりするのは不誠実なのでつきあわないし、作らない。
これが実情。
まあ、遊ぶ友達は欲しいが「男とセックスしろ!」とか強要してくる友達は欲しくないのだ。
そして、残念なことにそうでない友達には出逢ったことがない。
友達は必ずセックスの話をしてくる。
そして、異性とつきあわないのは不健全であるかのように標ぼうするのである。
つらいよな。
セックスしたくない人間だっているのに。
そうでなくても、わたくし自分が男なのか女なのかわかんないのに。
チックタック、チックタック……。
猫の餌皿についてるタイマーが時を刻んでいる。
わたくしの時間も孤独に切り刻まれていく。
猫が棚のてっぺんで眠ることにしたらしい。
ちょっと不器用に足場を気にするあたりがかあうぃい。
さてと。
明日の午前0時過ぎにはこの子を置いて家を出るのかと思うとつらいが、おみくじは引きたいし、お札も破魔矢も欲しい。
大国主の神様と天照大神に浄財を投げてご挨拶をするのだ。
手元にお金なんてのこらないけれども、これが一年の始まりだ。
チックタック、チックタック……。
キリキリとどこかの枝葉が雨戸をひっかくが、これほど孤独でなかったならば気にならないはず。
猫がこんなにも静かに眠っていなければ、知らずにいたことだ。
さびしい。
わびしい。
しかし、もうすぐ正月だ。
祝の準備をしよう。
そうして、気を紛らわせてすぱーんと一年を始めよう。
今はとにかく、寝てしまおう。
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