第411話 おばあちゃんが謎のケガをした!

 年末になるころ恒例のツアーに参加しようとして、朝靴を履こうとしたら門に後ろ頭をぶつけて病院行になった祖母。

 後日様子をみましょうと医師が言ってくれたので、今日の午後に病院へと向かうはずでした。



「トイレへ行ってくる」



 と珍しくはっきりと言って、出てきたときなぜか右足のズボンの裾が大きくまくられています……母がそれを見てびっくり。

 なぜなら、祖母の足首が紫色に腫れあがっていたから。

 わたくしも母もこれはどうしたんだとしつこく聞きましたが、要領を得ない返事。


「いつどこで、こうなったの?」と聞いても「?」ってお顔。

 母が「何日くらい前? 三日前か一週間前か?」と聞いて初めて「四、五日くらい前かな?」と。

「ぶつけたの? 気づいたらそうなっていたの?」という母の質問に祖母はただこっくりとうなずき、いつの間にかそうなっていた、ということになった。


 えぇ? おばあちゃん、けがをしたならその場で言わないと処置が遅れて大変なのにっ! 言わないどころか、「気づいてください」と言わんばかりにズボンの裾をめくって歩き回って。

 どういうつもりなのかさっぱりわかりません! 傷の具合は、こう、靴下のわっかみたいなうっ血した感じ。

「頭につける薬をつけても大丈夫か、先生に聞いてこよう」と、母はなにかズレまくってる意見を言っていたけれども。


 実は大晦日の朝から、お正月にかけて母は祖母を連れて父の田舎へ行くつもり。

 新年会をするんだそうです。

 相変わらずわたくしをのけものにして、お寿司とか食べるんだわ。


 今日わたくしの留守番用の食事を買い出しに行って、母は「お餅を買ってあるから、一人用のおせちとそれを食べて」って言うの。

 マツタケのお吸い物を忘れないでって言ったのに、買い忘れるし。

 愛が足りない! わたくしなんか、車で母を待ってる間にカラスとおしゃべりして「お母さん、荷物重たくないかなあ」って言ってた。


 そしたらカラスは「きっと重たいと思う」って言うから、わたくし手伝いに行こうってお店の中まで階段をてくてく下って行った。

 お総菜コーナーで買ったらしきおせちとその他をトートバッグに詰めているところだったから、全部わたくしが駐車場まで運んだのです。

 なのに、母、お吸い物を忘れるって……。


 そんなことがあって、家に帰ったら祖母がああだったので、今わたくしはこう疑っています。

 もしかしたら、祖母は、本当は父の田舎なんかに行きたくなくって、紐かなんかで足首をくくってうっ血させたんじゃないかって。

 つまり狂言。


 そこまでして田舎へ行きたくないのかって言ったら、そう考える余地はあるの。

 祖母は父の話を聞かないし、耳が遠いからってほぼほぼ無視しているから、それが父を嫌っている証拠にならないとも限らない。

 父が嫌いなら、そんな父の主催する新年会になんて行きたくないでしょう。


 でも、祖母は好き嫌いが多いけれどもそれを言わない人だ。

 嫌いなごはんはだまって残す。

 まあ、母は祖母が残したごはんを次の日の朝食に出したりするから、気づいてないのかもしれないけれど。


 とにかく、祖母ははっきりものを言わない。

 だから、田舎の新年会に参加するのが嫌だから行きたくないとは言わずに、けがを理由に行かないことにする可能性は否定できないよね、というお話です。






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