第400話 友達がくれた名誉

 9月下旬といえば、今年前半期に応募した公募の選考結果が発表される時期だ。

 友達は戦績を積み、実績を作った。

 それで、健気なことに「水木さんのおかげがあってのことだから」と感謝をしてくれる。


 正直胸が詰まった。

 お友達がそう言うときは、多分自信がないのではないかと思う。

 だからいつも、「あなたが頑張ったおかげよ」って言うんだけれど……戦績があがっているとはいえ、先がまだある。


 もちろんわたくしは、友達が選考を突破するごとにおめでとうを言うのだが、友達は「賞をとらないと意味がない」って言う。

 ストイックなの。

 いいえ、今までの苦労は受賞によってしか報われない、という発想か。


 そんなにピリピリしてると、受賞しなきゃ小説書く意味なんてない、なんて思いこみそうで怖い。

 それは体によくないよ。

 あなたの物語、わたくし大好きだし、面白いものを公募に関わらず書き続けて行ってもらいたい。


 その結果として受賞があり、書籍化があるんだといいと思う。

 だけどお友達はストイックだから、きりきり自分を追いたてている気がするな。

 だから、わたくしは言い方を変えた。


「(あなたの言葉は)非常な名誉に思う。だから胸を張る! あなたと友だちでよかった!!!」と。

 本当はいたわってあげたい。

 だけど、本人が望んではいない気がする。


 望んでいたとしても、もう「水木さんのおかげ」といういい方はしてほしくない。

 せめて受賞するまで、わたくしをこれ以上泣かせようとしないでくれ。

 今のところいい成績をおさめているが、受賞した時に泣きたいのだ。






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