第384話 あのね、驚くと思うよ?

 わたくしは確かに言った。

 好きなように利用してくれてかまわないのだから、と。

 力になるとも、相談に乗るとも言った。


 正直踏み台にしてくれてかまわないんだ。

 それとは別っ子に、わたくしにはわたくしの悩みがあって、それとこれとはまるっきり無関係であることもわかってはいる。

 世間が無観客な五輪の中継に見入っている瞬間にも、自分は勉強してやるんだ、のしあがってみせると決意したわたくしだ。


 一つの冷厳なまなざしが、わたくしの頭上には存在する。

 中二だろうがなんだろうが、言ってくれてもかまわないがそれ以外の言い方をあえてすまい。

 いつか、わたくしの偉大さを知る。


 見返りを求めず、注げるだけの時間と命を注いで、友のために与えてきたわたくしの人間の大きさに、ビビるときがくる。

 まっすぐに行くがいいさ、その先は孤独だ。

 わたくしはとうに知っているから、行けるところまでは共に行こう。


 置き去りにされるのは寂しい。

 しかしそれは個人の感情だ。

 行くべき道は自分で見つける。


 自分の孤独に気づけ。

 独りで戦わねばならぬ、その最初のステージにいることを悟れ。

 わたくしの哀しみは、そこから先は永遠に力になってやれぬことだ。


 いつかはこない。

 しかし、いつかまた道が交差するときがあったならば、全力でその運命に感謝しよう。

 少なくともわたくしは後悔するようなことはしていない。


 あなたもだと思う。

 だけど、あなたが振り返っても、そこにわたくしはいない。

 もう、いないんだよ……。


 あなたの弱さをかばってやれない。

 今心弱く、倒れようとしている。

 そのわたくしに、なんら支えになってくれるものはないのだ。


 そうして強くなってきた。

 その力を、己のために使うことはできなかったようだ。

 これはわたくしの弱さだ。


 だが、弱くていいじゃないか。

 まだ、立ち上がれる。

 まだ、踏み出すことができる。


 まだ、生きているじゃないか……。






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