第383話 今日の収穫。
今日は気分があまりよくなかった。
そこで古本屋へ行って、今のこの気持ちをすっきりさせるのに役立つ本はないか、必死に探した。
本屋の奥をうろうろし、漫画コーナーと児童書コーナーで本をかごに入れてって、しまいには普通の小説にまで手を出した。
普通の小説って、普通の事しか書いてない。
あるいはまったく逆のあり得ない話ばっかり。
それなので、普段あまり読まないんだ。
でね、家に帰ったらまず荷物を整理していって、ベッドの上で『ターザン』という雑誌を読んだ。
「男と女のストレッチ&ヨガ」という、ちょっと健康的なんだか怪しいんだかわかんないコピーがついている。
男性と女性のモデルさんが黒いスポーツウェアで足をガバッと開いて床にうんとふんばって腕を高く上げて半身をひねっている。
これって、自分と同じくらいの年代の人には貴重な情報源だと思うんだ。
先だっても右ひざを痛めて階段で転びそうになったし、もちろん転びはしなかったけど。
広告のページを飛ばして記事を読んだら、さっそく準備体操から入った。
一つの運動を30秒間続けて、5、6個やったら次のページには「投球練習をする人用」「サッカーをする人用」のパフォーマンスを上げるための運動だってあるから、ほっぽっといてかいけつゾロリを読んだ。
なぞかけってあなどれない。
一定のルールに基づいて作られた高度なゲーム。
それから、『グレッグのダメ日記』を読んだ。
気分が悪いのに、ますます悪くなった。
どうして、こうも気分の悪いことがグレッグの前に起こるんだろうか。
グレッグは前世のカルマで、ママとパパにいじわるをされ、友人に見放され、苦労ばっかりしているのだろうか? 察するに違う。
彼はただ単に普通すぎるのだ。
普通ってなんだろうと思う人は「平均よりも劣った人」という言葉を噛みしめてほしい。
グレッグは両親にも恵まれているし、犬をペットに飼っている。
学校ではどういう暮らしをしているかわからないけれども、それは夏休みの日記なのでしかたがない。
よく面倒を見てくれるママへの不満とか、彼がなにかしでかしたときのパパの冷たい態度とか、グレッグはほんとよく見ていると思う。
しかし、気分が晴れない。
わたくしも『若き隠遁者の詩』などと銘打ってエッセイを書いているが、読者はどう思っているんだろうか。
もっと、世間で活躍している人のエッセイの方がためになると思っているんじゃなかろうか。
わたくしは思う。
グレッグのダメ日記は、漫画だったらいいけれど、個人の日記として読むには、感情移入がしづらく理解しがたい。
それはわたくしが普通ではないから。
グレッグが経験したような話は、いっさい知らない世界の事だし、まずわたくしに兄も弟もいないし自分自身もXX染色体の女性だ。
グレッグの世界はつまらない。
きっとどこかで胸躍る何事かが起こっているはずなのに、すべてを台無しにする彼のメンタル。
グレッグみたいになりたくないと思った。
パンイチで寝ているベッドにずぶ濡れの犬が飛びこんできて温まろうとしてきても、わたくしは笑っていたいと思うし、嫌なことははっきり嫌と言いたい。
どうして親やその周辺の人間にふりまわされるんだと、ツッコミを入れていってあげたい。
グレッグのダメ日記はそんな作品。
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