第378話 手相って不思議

 別にわたくしは、異性と自然に手を触れ合う機会が欲しくて手相を気にしているのではないのである。

 そこを前提にして、甥っ子のYくんの手を取ったが、彼は相当な努力家でストイックであるようだと感じた。

 まず、向上線がくっきりと長めに出ておりそこにさらにスクエアが出ている。


 これは聖職者の相で、自己犠牲と奉仕の精神を表し、また努力の末に願いが叶うという吉相だ。

 待ち受けているのは困難を乗り越えた後の勝利だ。

 他にも仏相眼が両手の指全部に開眼してるとか、ラッキーMだとか、ピカソと同じ神秘十字線だとか、陰徳の相だとか吉相はいっぱい出ている。


 驚いたのは、それをYくん本人が自分で調べて知っている、ということ。

 弟のKくんのマスカケも話題に出た。

 ははあ、これはわたくしと同じ例の線があるな、と思って見せてもらったらあった。


 享楽線。

 一つのことに専一に詳しいという、オタクの背負う線である。


「縦線が多いと理性的なんだよ。しわが多いほど感情が豊かなんだよ」


 と、10才にして分析をしている。

 どこからそんな情報を、と思ったらユーチューブ。

 マインクラフトばっかり観てるのかと思ったらwww


 うっすらと、本当にもやもやっと覇王線が出ているのもねえねと同じだね。

 でも、ねえねは女性なのでまっすぐくっきりとした運命線も覇王線も今の時代ではあまりよくない難しい相なんだよ。

 Yくんは健康に気を付けて、疲れすぎないようにちょくちょく休んでおくんだよ。


 バタフライを覚えたのにコロナ禍でプールがお休みになってしまって残念だったね。


「別に学校は泳ぎを教えてくれるところじゃないから」


 と。

 そうかあ。

 でも、そういうばっさり切り捨てる言い方、ねえねは好きだな。


 Yくんと話してると面白いな。

 男性と女性の違いは「性別が違う」と答えるところは年相応だから、性染色体のお話をした。

 男の子のX染色体はママから受け継いだものだから、ママが苦手なものはYくんも苦手になる可能性が高い、という(体質とかの)お話もした。


 いろいろいっぱい省いたが、海幸彦と山幸彦の話をして、歴史的に兄弟が喧嘩をすると弟が勝つのだよ、気を付けてねという話もしたなあ。

 古事記と日本書紀なんて、興味ないかもしれないけれど、Yくんはお話を聞くのが上手だ。

 ふんふん、と上手にうなずき、黙って聞いている。


 つむじがまっすぐの素直な子だから、勉学方面で成功するかもしれない。

 ケータイ小説を勧めてみたが、「児童文学は本になってるやつを読みたい。おもしろそうであれば」という反応。

 ちょっぴり残念だけど、Yくんの世代はマインクラフトらしい。


 もうすぐ11歳。

 スイッチとファイヤーエンブレムのお礼に、誕生日には任天堂ライセンスのコントローラーを贈ろう。

 できたら、手作りのプレゼントもしてみたいのだけど、なかなか勇気とやる気がおきない。


 折り紙の輪飾りネックレスくらいならできるかなあ。

 お誕生日おめでとう。






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