第344話 教養と子供たち

 と言っても、妹夫婦の子供たちです。


 わたくし、最近ちょっと、いやだいぶ、すごく悩んでいた。

 けど、甥っ子たちを見に行って気づかされたことがいっぱいあってですね。

 十枚以上あるテストの答案をひとつひとつ、丁寧かつ一生懸命に直してる姿に、初心を思い出しました。


 妹が一生懸命間違いを正して、理解を促そうとしている。

 けれど、子供は自分一人では直せない。

 どうしてバツ印をもらったのかもわからない。


 それを一つ一つ解明していってるんですね。

 こんなふうに、わたくしもお友達にこんがらがった事情を解きほぐしてもらった。

 落ち着いて考えろ、と。


 中には珍解答もあって、笑ってしまうのですが、子供って本当に天才だなと。

「わあ、いっぱい丸があるねえ」

 って言ってあげると、

「でもバツがある」

 って言うから、直したときに「丸が増えたねえ」って言ってあげる。


 お勉強はいちばん最初の方がきつい。

 母子があきらめずに立ち向かっていってる姿に感銘を受けた。

 お兄ちゃんには教養の本をあげ、弟君には漢字の覚え方を教えてあげる。


 妹が「読解力をつけるにはどうしたらいいか」というから「絵本をたくさん読むことだね」と言って、わたくしが最近児童書を読んで、達成感を得て難しい本もすらすら読めるようになったことを知らせた。

 要は難しいことから始めるか、簡単なことから始めるかの違いだというと、「いいこという!」って言ってくれた。


 お兄ちゃんが弟がとってきた点数をバカにするので「なんだよぉ、Kくんが**点、とったんだぞぉ」って抗議した。

 それに、Kくんは読解力がないなどと言われてはいるが、数字に強い。

 妹は「読解力のせいで算数も、文章問題になると間違える」っていうけれど、芽生えたばかりの双葉をぐいぐい引っ張ったって実は育たない。


 ここで不思議なのは、Kくんは簡単な問題をバッテンもらうのだが、応用問題はできる、ということだ。

 ママにお勉強を見てもらいたくて、わざと間違えてるのではと疑う。

 なかなか見どころがあって、おもしろい。


 こくごの読解力がやり玉にあげられていたが、Kくんは発想がすごいから。

 <この文はミニトマトの「花」と「み」について書いています>

 が解答なのだが、Kくんは、

 <この文はミニトマトの「こ」と「を」書いています>

 って書いた。

 間違ってない。

 なのにバッテンくれるのは腑に落ちない……。


 算数も文章問題で、

 <3×1は1増えるごとに「三の段が」一つすすむ>

 という問題に、

 <3×1は1増えるごとに「その段が」一つすすむ>

 と回答してあり、文脈は読み取れているとわかる。

「これは問題がちょっといじわるだね」

 そしてKくんは大したもんだね、と感じた。


 その体験を通して、わたくしは教育、教養というものは親が子に与えるだけの価値があり、全ての真実だと思った。

 妹の献身と愛情は、きっと子供たちの中で熟成し、成長し、鮮やかに花開くことがあるだろう。

 子供はわからないことをわかるようになりたい、と願うものだ。


 わたくしも、わからないから、勉強したし、わかるようになりたくて頑張った。

 そのうち、知っても知っても知識には上限がないことを知るのだが。

 ものを考えるときにその知識が役に立つことは間違いない。


 テストはちょっとした技術というかコツをつかめばなんとかなるものだ。

 出題者の意図を読むとか。

 わたくしも頑張ることにした。

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