第341話 R.F.さまへ3

 R.F.さま


 お子さんをなぐっていらしたのなら、ご存じとは思いますが、なぐり方にもいろいろあります。

 一見派手に音は鳴るけれども大して痛くもないし痕ものこらない殴り方と、音もしないし痕ものこらないけれども、呼吸ができなくなりのたうつようななぐり方や、うめくこともできず身動きも取れなくなるような激しい痛みを与えるなぐり方です。

 父は主に後者を好みました。

 無力な子供にとって、親になぐられるというだけでもショックなのに、それ以上の苦痛を与えられるのです。

 単なるおしおき、にしては体罰はやりすぎではないでしょうか?

 子供をなぐるのには賛成できかねます。

 あなたのその乱暴によって、お子さんの心に傷が深々と残っていやしないかととても心配ですね。

 いつか仕返しされることでしょう。わたくしもしましたから。

 大の男も年をとれば社会的弱者です。

 若さも体力もありあまる子供にどう、対抗できるというのでしょうか。

 今のうちにお詫びをいうべきでしょう。

 親であるあなたが大人になって、一人前の人間ならば悪いことをした時にはこう謝るのだ、とまずはお手本になってあげることを切に望みますよ。

 わたくしの父はそれをしなかったため、幼いころから鍛えられた腹式呼吸で世間に聴こえるように怒鳴りつけてやったので、今彼は田舎に土地を買ってひっこみましたよ。わたくしに仕返しされると思ったんでしょうね。

 虐待をされた子供は虐待をするようになるんです。

 そもそも心に負ったトラウマは、そのもとを叩きのめさないと克服されないのです。

 わたくしは父親を許すでしょう。

 彼はそのうち音をあげます。

 必ずね。

 なぜなら、それだけのことをしてきたのだと、本人に思い知らせるべきだと心が命ずるから。わたくしはやりますよ。父が音をあげるまでね。

 なんどでも。






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 水木レナ

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