第286話 昨日の甥っ子たち

 おベンツに乗っているはずの、下の妹が、子供を連れて母の車を借りに来た。

 子供たちを預かってくれという話。

 ところが、この甥っ子たち、部屋の奥に悠然と寝そべる愛猫を見て、まずK君(7歳)が二メートルくらいの距離から、見下ろして言ったことには。



「どうして、でっかいの?」

 そりゃ、満一歳を迎えたら猫は大人だから。

 とはわたくしに言わせず、母が、

「この猫ちゃん、満一歳なのにおっきくてねえ」

 などというから、K君はなぜか得意そうに、

「でっかい」を繰り返した。


 K君はすみっコぐらしとかサンリオとかかわいいのが好きなのだ。

 そして、自分はちっちゃいからかわいいと思っている。

 きっと、猫をでっかいといえば、自分は小さいのだから自動的に自分のほうがかわいいということになるだろうと思い込んでいるのだ。

 私はKくんに「ネコアレルギーなんだったよね」

 と言ったが、K君は、

「ちゃんと手を洗えば平気だよ」

 と言って愛猫から目をそらさない。

 隣で見ていたお兄ちゃんのY君(10歳)は、おとなしくその様子を眺めていた。

 そういえばY君はネコに警戒されやすく、接触機会が極端に少ない。

 いつか触らせてあげたいなと思う。


 YとKは、録画の「カラオケバトル」を観て帰ったようだ。

 バトルというのが肝で、点数が出るところが楽しいらしい。

「何点? 何点? 何点だあー」というのが好きらしい。

 けっしてわたくしも嫌いではない。

 森口博子の水の惑星から~という歌が大好きだったし。

(森口博子さんが出演していた)


 夕食の席で、おかしそうに母が告げる。

 もう、ダーウィンが来たじゃないのよ、と。

 じゃあ、おさるのジョージや、スポンジボブや、羊のショーン、お尻探偵を録画しなくていいのだな、と解釈。

 大きくなったわね。

 その調子でね。

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