第257話 フィン感とわたくし。

 不思議なんですよ。

 フィンディル感想ってね。

 フィンディルさんが、お一人で約8日~14日かけて、短編を読みこんでくれる。

 しかも音読。

 精読してくれるんです。

 斜め読みじゃない。

 それで、作者のためだけに、一生ものの感想をくださる。


 正直、褒められなくても、指摘だけでも、あのフィンディルさんがくださるものだ。

 感謝しよう――そう思っていました。

 でも、わたくしは怖がりで。

 応募した後でも、順番待ちしながら、さまざまに妄想し、読む価値なしと言われたらどうしよう? 文章ににじみ出る人格が嫌いと言われたらどうしよう、と、さまざまに思いつつ、戦々恐々としていました。


 他のだれに言われても、それは努力してどうにかすべきものとしてとらえられますが、フィンディルさんが「努力しても無駄」と言われたら、一巻の終わりだと、そう思っていました。

 応募した作品は、ゆあんさま企画<筆致は物語を超えるか>の『葉桜の君に』参加第三弾でした。

 精力的に(ていうか、徹夜)書いたわりに低評価。

 ――なんでなんだろう。

 そう思っていました。

 わたくしは自分の悪文に気づけない、愚か者でした。

 ですから、唯一の読者だった母にも見限られ、読者不在の文を書いていたのです。

 今回、フィンディルさんには「心は文章に通す神経」と教えられたので、心をこめるように心がけ、結果90/105という得点をいただきました。

 105点満点ということは、作品の面白さがもっと引き出せる題材ということ。

 そして、90点というのは、ハイスコアなのです。

 園さ分は15点。

 得点の見方が、フィンディルさんのカクヨムノートに書かれています。


 やった。わたくしはやったんだ。誰に認められなくても、フィンディルさんが認めてくださった。

 頭の中は真っ白でしたが、泣いて喜びました。

 陰ではえーきちさんが、整合性や違和感のある個所を指摘して下さり、助けていただきました。

 けれど、わたくしがこの高得点をまぐれだとか、ビギナーズラックだとか言って、辞退することは、精度の高いことが売りでもあるフィン感と、面白いと言ってくださったえーきちさんに失礼だと気づかされましたので。

 謹んでお受けいたします。

 わたくし、やりました!

 ありがとうございます。

 こんどは、母のために書いた「おとぎのびんづめ」の中から短編童話「ネコの大工」を応募いたしました。

 こちらは自信があります。

 実話がベースにありますし、もともと童話は残酷な現実をのみこみやすく作られたものです。

 性にあってると思います。

 フィンディルさん、お手数おかけします。

 祈りながら。


 フィン感はすごい。

 ただごとではない。

 誰にでも納得のいく感想なんて、あたりさわりのないリップサービスなんじゃないの?

 ――違いました。

 フィン感はこの世で一つ、作者のために書かれた純度1,000%の贈り物です。

 受けた方は、自分の隠れた魅力や、気づかなかった美点をあげられて、なるほど確かにその通り、と思う。

 それだけではなくて、いたらなかった点についても「ここはあまり評価できません」ときっぱり!

 フィン感のいいところは、それでも、指摘をどう受け取り、消化していくのかが、作者本人にゆだねられるのです。

 作者自身が、この方ならばと、作品をゆだねるのと同じく、フィン感もまた作者にゆだねられます。

 作者とフィンディルさんの、贈りあい。

 それが優しく、円滑に運ぶことを祈り、書き送ります。9


 フィンディルさんは恩人なのですよ。

 わたくしの悪文に耐えて、方角付けまでして、わたくしの作品をほめてくださった。

 本来、フィン感は褒めと指摘からなると、聞き及びましたが、わたくしは

「褒めとその根拠をはっきりさせてくれる」

「作品のお腹の中まで、わかるように、丁寧に解剖してくださる」

 どMにはたまりませんね。

 わたくしの排泄物みたいな作品を――そう思いました。

 フィン感への先入観は、根深くあったわたくしは、どうしてそんなに褒めてくださるの!? と半ばパニックでした。

「世界の底から見上げるように生きている」とズバリ作品中のヒロイン(これが作者の分身でした)のありかたを言い当ててくださった。

 なんども諦めて、もう信じるしかない。

 だから、書きます。

 わたくし、報われたんだと。

 がんばったね、えらいえらい、と大人になったら絶対に言ってもらえない、褒めでした。

 ですからわたくしは、胸を張って、これを受け止めようと思います。

 ありがたいと思うのならば、立派に一人立ちせねば。

 フィン感への恩は、親への恩と同じです。

 自分で立てるようになるまでが、フィン感なのです。

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