第236話 甲斐性無しじゃん?
義弟は初めて家にあいさつに来た時、わたくしを見るなり、「*ね」と言った。
何を言ってるんだと、よく話を聴こうとしたら、「すげかえ、すげかえ」と同じ言葉を繰り返した。
病気かな? と思って聞いたら精神障碍者二級だということだった。
おー、わたくしと一緒だ。
わずか、親近感を覚え、敵ではないよと態度で示した。
自分の席を、彼に譲ったのだ。
そうしたら、彼はふんぞり返って、ペラペラと調子のいいことをしゃべり倒した挙げ句に、自分は障碍者であることを隠して働いている、その方が頭がいいんだというようなことを言い始めた。
そうかもね、嘘ついてれば、正規で働けるんならね。
でも、発言が危うくて、正気とは思えないのね。
あとで聞いたら、双極性障害? ということだった。
それでも、妹を養うために嘘までついて働いているのだ、と思うとその気概、けっして悪いものではないと思う。
思うが、独立してから、ほとんど仕事が入らなくなって、依然、生活費の中で、光熱費と家賃の基本料金を母が支払ってるらしい。
「おまえが*ね」と言ってやればよかった。
なにも、義弟だからと言って、攻撃の的になってやる必要などなかったのだ。
妹も不幸だ。
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