第226話 2020/04/25/土 憤然
昨日歯医者に行った。
そのとき、ちょうど妹が息子を歯の矯正につれていくからと、母が聞きつけ、一緒に行けばいい、という話になった。
我が家は4人乗りの車だが、母が迎えに行くから、妹がうちにしたの息子たちを預けてくれれば、母は子供たちの面倒を見るから、車を貸すよと約束したらしい。
この妹が自己中で、それなら、母に家まで子守りに来てよ、その間に車を借りて歯医者へ行く、と言い出した。
行ってみたら、車庫にはいつもの改造ベンツがない。
感染症が怖いので、旦那さんが職場に乗っていくのだということだ。
それじゃしかたないよな。
妹も自分の都合を言いすぎだ。
しかし、子供はいつも我が家を散らかして帰るし、兄弟げんかが険悪なので、迷惑と言えなくもないからいいや。
そして、帰り道、車の中で妹が言うには、『ワンピース』(だいぶ前に甥のY君に貸したが、感想もいわないし、返してくれない)の続きを貸してくれと言い始めた。
残念なことに、感染症が流行る前にBOOK OFFに売ってしまったのでそういう話をした。
いやでもさ、あれはワンパターンだよと言うと、妹は
「読んでないから」
話題にしてくれるなという。
ふーん。
態度でかいじゃん。
「でもさ、仲間集めるところいいよね。ゾロとか」
「見てないから」
なら、なんで続きを貸してくれなどというのか、不思議でたまらない。
わたしは賢明に話題を途切れさせぬように、言ってみた。
「でもさ、ドラゴンボールの方がいいよ、だってゴム人間になんてなれっこないじゃない」
「いや、スーパーサイヤ人にだってなれないし」
「それはそうね」
カッコウだけマネするなら可能だけれど。
金髪にして、カラコンいれて、毛を逆立てて。
けど言わない。
甥っ子がまねしたら、目も当てられない。
しばらく妹はベジータが好きだということをつらつら述べた。
「ちゃっかりブルマとくっついちゃってさ」
ていうから、
「ああ、寂しそうなところが気になって、とか、男の影に惹かれちゃうとか(ブルマが)見るとこ見てるんだよねブルマ」
と、そこまではいいとして、そのうち感染症のせいで家で暇をつぶすのに、ゲーム機のスイッチを買おうとしたら、どこも売り切れで、と言い出した。
わたくしは去年、カクヨムユーザーさんに勧められたファイヤーエンブレムをやりたいがためにスイッチを、年金をはたいてBOOK OFFで入手していた。
しかし、ファイヤーエンブレムのソフトの方を買う余裕がなく、後回しにしていたので、今のところスイッチで遊ぶことはない。
わたくしは、スイッチを持っているから、家族で遊ぶのに使っていいよと貸すことにした。
中古新品でまだ一度も起動させたことのないものだ。
むしろ使い方がわからないから、つかった後でいいから教えてねという話にまとまった。
その日のうちに母が聞きつけ、わたくしのスイッチを妹宅にもっていった。
しかし、そのあとが問題だった。
今日、母がにこにこして、わたくしになんのメリットも生じない取引を持ち掛けてきた。
母は、つかわないスイッチを持っているなら、2万円払うから、ばあばからの誕生日プレゼントとしてYにあげようと思う、と言い始めた。
2万円あったって、スイッチは新たに買えないし、わたくしのものを母からのプレゼントにする、という点にかちんときた。
使うから買ったのに、妹宅には暇つぶしのスイッチがない、というから貸したのに。
本当は自分で使いたかったのに、売り切れにぶーぶー文句を言っていたので、ぐっと我慢して貸した――それを、安く買いたたいて自分からのプレゼントにしたい、という母の神経がわからない。
母はええかっこしいなだけだ。
孫に気に入られたくて、でもスイッチを入手できなかったので、わたくしから取り上げようとしたのだ。
2万円でスイッチを甥っ子にあげて、わたくしにとってなんのメリットがあるのか。
取引とは、どちらか一方が損する場合、成り立たないのが普通だと思う。
わたくしは三度抵抗した。
母はのらりくらりと、自分の失言を認めないから、腹が立った。
しまいには、正論で攻め続けたら、やっと謝ってくれた。
スイッチが手に入らない、家の中は退屈だというから、では嫌だけど貸そう、と言った仏心に付け込んで、こともあろうに母からのプレゼントにしたいなどという言い分は断じて認められない。
母は都合が良すぎるんだよ――!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます