第164話 たんころりんが好き。

 たんころりんって知ってる?

 森に生きる精霊なんだ。

 あ、わたくし見たことはない。


 じゃあなんでこんなことを書くかというと、最近書棚の中から出てきた『霊媒師いずな』って漫画を読み直したから。

 たんころりんは4巻に出てくる。

 すさまじいんだ。


 純粋で、無垢で、なにか力を感じるね。

 東北のイタコの血を引くいずな(女子高校生の霊媒師)も、たんころりんがいる森には癒しがあるって言ってる。

 もの言わぬ精霊なんだよ。


 森をつくり、森を守るためには怪物のようになって戦うの。

 だけど、ここ、P57! ラストのコマには言葉をなくすね。

 本来言葉を話さないたんころりんの気持ちを表すのには、画力が必要だと思うんだけど、このコマを見たら、この漫画家さんいい絵を描く人だなあって思うと思う。


 無力化されてしまったたんころりんには、切り倒される木々の悲鳴が聞こえたんじゃないかと思う。

 あんまりだよ。

 おじいさんとたんころりんが、精魂込めて作り上げてきた森を、無造作にバキバキバキ! っていうのは……。


 ここのところのたんころりんの気持ちが、伝わってきてさ。

 悲しいんだよ。

 人間であることが悲しくなる。


 ごめんねって、謝りたくなる。

 シナリオ原作の真倉翔さんは、甘やかしすぎてどうしようもなくなってしまった子供たちのために、森を手放すことに決めるおじいさんに言わせているんだけれど、それも人間の悲しさよね。



 だけど、たんころりんは人間を責めたりしない。



 そもそも精霊って、そういう恨みがましいことを言う存在じゃない。

 怒りはするんだろうけれど、長くは続かない。

 だけど、わたくし、たんころりんを抱きしめたくなってしまう。


 痛かったね。

 悲しかったね。

 ひどいことされたよねって。


 きっとそれが、わたくしの心の中にある「子供」の心なんだと思う。

 たんころりんはしゃべらない。

 決して「森林破壊」だの「自然破壊」だの「環境保護」を声高に叫んだりなんてしない。


 だけど、これを見て何も思わないなら、その人は自分の生き方を振り返ってみた方がいい。

『霊媒師いずな』はそういうことを言っている漫画だ。

 もの言わぬたんころりんの、心を感じてみたらいい。


 何度読んでも泣く。



 大好きだ。

 

 だいすきだ。






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