第69話 2019・10・20(日)おぉおい! スコちゃん……
子猫に対して、人間は大きすぎる。
力が、肉体が。
そして、常に己の想像力に対し、過信している。
今日、スコちゃんがエサを食べているとき、以前飼っていたアメショの子の最後の姿が目にちらついていた。
わたくしはそのとき、覚悟を決めようとしていた。
スコちゃんの最期を看取る覚悟を。
ところが、わたくしの脳みそは偏っていて、買い物に出ているときは、スコちゃんの無事ばかり念じていた。
ケガはしてないか、お腹はすいていないか、弱ったりしてないか。
普通に買い物へ行っただけで、心労になりそうだ。
そして、帰ったら、赤城BLACK(アイス)をまっさきに冷凍庫へ入れ、荷物を片付けるのもそこそこに、部屋をのぞいた。
スコちゃんはそこにいた。
FMラジオとあけ放った窓に動じることもなく。
わたくしが、チーズ餅を食べて部屋へ戻ると、においを嗅ぎつけたスコちゃんが、わたくしの口をなめようとまとわりついてきた。
相変わらずすりすり、近寄ってくる。
そこでまず、わたくしは勘違いをした。
もう、この三日間で、スコちゃんはわたくしに馴れてくれたと思い込んでしまったのだ。
だってだって、ドアを開けると、スコちゃんは。
わたくしの足の間からすりぬけて、廊下をとてとてと歩いて行ってしまうのだ。
しかし、母との約束で、スコちゃんはわたくしの部屋だけで飼うことになっている。
だから、いそいで連れ戻した。
後脚に片手を添えて、胸を支えて持ち上げて、いそいで部屋の中へ放ったのだ。
するとスコちゃんは……。
ぴゃ~~っという顔をして、どういうわけだかわからなかったけれども、ベッドと部屋の端から端までを走り回って、アクロバット級のジャンプを繰り返した。
どういうこと? と、またも無反応に陥るわたくしだった。
しかし、冷静に考えてみれば、スコちゃんはペットショップで育ち、人間に馴れてない。
当然、抱っこなどもされたことがない。
パニックになってしまったのに違いなかった。
スコちゃんが家に来てから、少々ハイになっていたわたくしは、暗澹たる思いがした。
一生懸命、遊んであげて、部屋のほとんどをスコちゃんように明け渡して、そしてくつろぎの部屋を譲ってきたのだ。
わたくしが払った犠牲に対して、この失敗は痛手が大きすぎた。
スコちゃんは気が違ってしまったかのように暴れているし、おしっこもベッドでした。
ずっと我慢してたらしいのはわかっていたから、早くおトイレを教えてあげたかったのに、それも失敗した。
もう、めげます……。
スコちゃんはわたくしに馴れてなどいなくて、人間に抱かれただけでパニックになるし、繊細で弱弱しくて、本当に気を遣います。
そのうえで、寝る場所すら失ったわたくしには、もはや安住の地はないのです。
リビングのソファでノートPC開いて、これを書いています。
どうしたら、今日のこの失敗を取り戻せるだろうか、と、暗い気持ちになりました。
スコちゃんがわたくしのことをトラウマに思ったらどうしたらいいの?
今朝は姿を見せただけで、すり寄ってきて、膝にのっかってきてくれたのに……。
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