第15話汝はバカか?
『バカボンのパパよりバカなパパ』最終回であった。
やはり、バカの天才は、恐怖の記憶を持っていた。
どこまでも広い平原、満州の夜。暗闇の恐怖に打ち勝って、バカやって、笑って仲間と走り抜けた人だった。
ところで僕は怖がりで。
両親がケンカしてればビービー泣いて訴えたし、死がいつも隣にあると思っていた。
頭の中で考えることは、いかにして生きのびるか、そればっかり。
だけど、赤塚不二夫せんせいは、とっくに答えを見つけていた。僕が必死で追い求めたギャグ。それが、恐怖の特効薬だと。
僕はね、先生。先生のギャグを面白いと思ったことは一回もなかった。TVも禁じられていたし、周囲に先生のギャグを繰り出す人もいなかった。ようやくアニメのリバイバルで「イヤミ」というキャラクターが知られてきた頃、僕は不登校になっていた。
まあ、親父様にぶん殴られて、登校するようにはなるんだけれど、あれから周囲とは異なる文化を摂取し続けていたから、今も独りぼっちのままだ。仲間を欲しいとは思わない。僕は他者が怖い性質なんで。攻撃されれば三倍返しの出血大サービスだったし。ゲームでいうところのオーバーキル、よくされたから、小説の悪役のネタに困らない。
だから、点字の絵本を作ろうとしてるのを見て、この人は本当に、偉大だと思った。本当に人のために尽くしてきた人が行き着く先は、子供たちの未来なんだ。
子供にこそ笑いは必要なんだ。それは子供向けのギャグマンガを描き続けてきた先生だからわかる答えだった。
子供には恐怖がたくさんある。だから、笑わなくちゃ。
もっと、生きて欲しかった。赤塚不二夫せんせい。
僕が「シエー!」を理解できるまで、生きて欲しかったです。
僕は、家族の死後、仕事場であれやこれややっている、おとうさんの影を追って扉をあける娘さんがきゅんと来た。そして、その場に残された原稿も。
「人生は思い出を積み重ねていくことなのだ」(意訳)というバカボンのパパのよこで、ネコみたいな噺家みたいなキャラが「いや~ん、エッチ」と言っているのがおかしかった。
大人になっても、親の生きざまを憶えているというのは、幸せで、心強い。
まあ、僕は親なんて勝手に生きればいいと思っているけれども。
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