リアルは物語よりも奇なり!
天谷コウ
始まり
物語の主人公のようになりたい。
誰でも一度は思ったことあるだろう?
物語の中心にいる彼ら彼女らは悩み、苦しみ成長して笑い、楽しみ物語が終わりを迎えるまで走り続ける。退屈とは無縁な存在だろう。
彼ら彼女らの行動一つ一つが人を惹き付ける。心を動かす。
俺はそんな主人公達のように…いや、もっと凄い最高の主人公になりたいと思っている。
だからどうすればなれるのかずっと考えてきた。
一言に主人公と言っても世の中には物語が溢れているし、主人公もその数だけいる。主人公といってもその有様は多岐に渡るわけだ。
では一概に主人公とは一体どのような人物か?
俺は様々な主人公達をみてきて一つの結論に辿り着いた。
…それはーー
物語の主人公とは『魅力的かつ特異な人物のこと』である!(※あくまで個人の見解です)
一文で言い切ってしまったが主人公に必要な条件は二つだ。
まず『魅力的』であること。
物語の主人公とは言い換えれば物語の主人公にしたくなるような人物と置き換えれるだろう。
つまりは何かしらの魅力が有るのではないだろうか?
うーむ…改めて考えると俺にもどうすれば魅力的な人物になれるかまでは正直、分からん…。
とりあえず次だ!
あと一つの条件『特異な人物』だが、これは平凡でないなにかをもっていればいい。
至ってシンプルだな。
例えば何の変哲もないように思える日常系物語の主人公もその実特異な性質もしくは行動をもって主人公となっているわけだ。類稀なるツッコミセンスとか…格好よくはないが。
とにかく平凡な人間が平凡に過ごしていて主人公になることはないのだ。
そういえば前に人は誰しも自分の人生という物語の主人公であるみたいなことをきいたことがあるが…そんなわけない。そんなものは人生が上手くいっていないやつが自分を慰めて自己満足を得る為に言った言葉でしかない。
想像してみろ仮に寝て起きて食って寝てを繰り返すひきこもりがいるとしたら…まぁ流石にそこまで酷い奴いないが…あくまでも仮にそんな人物がいたら、主人公になることは絶対ないだろう?はい!Q.E.D!
以上が俺が導き出した主人公とは?の問に対する答えである。理解していただけただろうか?いや、俺の理論ではそうというだけで別に理解してもらう必要はないのだが…というかそもそも俺の心の声だから誰も聞いてないし…
まぁそんなことはどうでもいい!
重要なのはこの俺『
これもずっと考えてきた。俺なりに答えも出ている。
最初に俺が導き出した答えは『素質は十分にある』だ。
特異な人物という点でいうなら俺ほどの者はそうはいないだろう。
何故ならば…俺には特殊な能力があるのだ!
この能力に気付いたのは確か八年前ーー俺がまだ七才、小学二年生の頃である…あっ、以下回想。
クラスの中で階級をつけるとするならば丁度中間目立ちすぎず地味すぎない位置にいた俺の友人…モブキャラAくん(地味すぎて名前は忘れた)がある日自慢気にクラスの全員の前で特技を披露すると言い出した。
そして披露した特技が『フィンガースナップ』所謂、指パッチンと呼ばれる 中指を親指とこすりあわせるように手のひら側に勢い良く打ち付けることで「パチン」と音を鳴らせるアレだ。
ーーあのときの彼の指パッチンは凄かった。テクニカルな指さばきから生まれる情熱的かつ繊細なリズムはクラス中の誰もがスタンディングオベーションで感動していた。
いや、とはいえ俺はそこまで凄いと感じなかったが。むしろ『やれやれ。まぁ動物の排泄物ですら面白く感じる年頃だしな仕方あるまい』と思いながら見ていた。
…別に羨ましくて意地をはって反応しなかったわけでは決してないからな。
俺の反応はどうあれクラスには大好評だった指パッチンは当然のようにそれから暫くの間クラスで流行った。俺としても流行してしまったのなら乗らない訳にはいかない。そしてやるからにはモブキャラAくんよりも素晴らしい技を披露せねば意味がない!!そんなわけでその日の帰宅後、早速自室で練習をしようとうまれて初めて指パッチンをしたときだ。パチンという音とともにーー火が出た。
正確には火花が散った程度だったが。
そしてそれから試行錯誤と練習を重ねた結果、今では完全な炎を出せるようになった。
そうつまり俺は炎を使える特殊能力者なのである!!
はい!!回想終了!!
話がそれてしまったな。
さて、では話を戻して…俺にはこの能力がある。つまりは特異な人物という条件は満たしている!
ただ一つ問題があった。
この能力、意外に使い所がないのだ。
超能力バトル的展開が現実にある筈もなく、日常において火を使う場面など料理ぐらいにしかない。いや、料理ですら今の時代では電気を使う家庭も珍しくないのだ。つまり披露する機会がない。能力があっても使わなければただの人と何ら変わらないのだ。
ならば自分から取り敢えずこの能力を披露すれば…と思ったこともあった。
だがそれは失敗だった。
そう、あれは…あっ回想その二入りますーー中学入学初日のクラスでの自己紹介。クラス内、いや学年での身分がここで決まると言っても過言ではない重要なイベントである。
そこで俺はそれはもう盛大にやらかした。
あの頃、せっかくの能力も練習ばかりで披露できずもどかしく思っていた俺は「披露する場がなければ作ればいい」と思っていた。そんな折りにクラス中の人の目の集まる自己紹介…ここだと思った。
ただ火を出すだけではインパクトにかけると思い「うぅ…しまった!!くそ!!能力が抑えきれない!!」などと小芝居をいれたのも失敗だった。
結果として俺の能力は手品だと思われた。
まぁ、あの頃出せる炎のサイズはロウソクの炎程度だったしな。
しかも、それだけでなくその日から俺は「全力で中二病を拗らせたヤバい奴」と言われ避けられるようになった。おまけにその日は担任の先生に二時間も説教をくらった。
回想その二終了。
今思い出してもかなり辛いな…消せるものなら消し去りたい記憶ダントツの一位だ…
だが、しかし!!こんなことでへこたれる俺ではない!!
物語において盛り上がりに欠ける部分ができるのは必定!だからこそ山場が映えるのである!
盛り上がりに欠ける中学生活は先日終わりを迎えた。
そして、明日からは高校生活の幕開けである。全てをリスタートさせるべく家から遠い高校を選び入学した。俺のこの禁断の過去を知るものはいないだろう。
さらに高校生学園ものにありがちな「主人公は一人暮らし」も遠い学校だからと親を説得してクリアする至った。
中学の時のような失敗はもうしない。
あの失敗からさらにどうすれば主人公になれるか考えに考えた。一人の時間は多かったし、というかほとんど一人だったし考える時間は腐るほどあった。
そして一つの真理に辿り着いたのだ。
主人公とはなるべくしてなるのだと。
そう!運命である!
物語の主人公達は自分から主人公になるために行動したか?…否!
主人公の素質さえあれば能力を活かすイベントなど自然と発生するのだ。そして自然と魅力的になっていく。
俺は我慢できず無理矢理自分から主人公になりに行くようなマネをしたから失敗したのだ。
そんな必要はなかった…俺は主人公の素質を持っている。つまりイベントなど自然と発生する!そう!それこそ定められし運命!
…決して迷走した結果自棄になって言っているわけではないからな。
まぁつまり、ひとまず明日からの高校生活は普通に過ごせばいい。
数多の主人公達よ!待っていろ!
絶対に俺はお前らを超える最高の主人公になってやる!
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