両思い一方通行

白木雪

第1話

「ねえ、ロミオ様、なんで月があんなに

輝いているか知っている?」

幻想的なベランダに佇む少女は

そう言って空を見上げた。

「さぁ、分からないな、

君は知っているのかいジュリエット?」

「私も詳しくは知らないけど、

きっとあの月は滅多に会えない太陽の

ことを思って光っているのだとしたら

すごくロマンチックよね!」

ロミオはクスッと笑い、空を見上げる

彼女のことを見つめた。




「はーい、カット!」

あちらこちらから息を吐く音が聞こえてくる

「いやぁ、いいねぇイチャつくねぇ。

胸焼けしそうだよ。」

憎たらしい笑顔を浮かべながら

ステージに近づく男の名前は相川蒼紫。

ここ市立柏坂高等学校演劇部の

副部長兼脚本家である。

「ほんとに憎たらしいほどイチャイチャ

するよなぁお前ら。」

「そういう脚本にしたのはあんたでしょ?」

そう言って冷ややかな眼差しを向けるのは

同じく演劇部の部長こと赤崎愛花

名前に反する愛なんてない罵倒で

他人(主に俺)をブレイクする生粋の

相川キラーである。

「で、どうだったの出来は?」

「もちろん大丈夫だよ、あの二人にそれを

心配する必要はねぇよ」

「だと思った」

「何せ、うち演劇部が誇る

ラブラブカップル(仮)だからなぁ!

憎たらしいわ!」

そう叫ぶと途端にステージ上の

2人がモジモジし始めた。

「はいはい、こんなKYDTの戯れ言なんて

無視していいから、さっさと着替えて

来なよ、もうちょいで運動部来るわよ?」

「なんと慈悲のないド直球!

もうちょいオブラートに包もうぜ?」

「アンタが地雷原に突撃したせいで、

剥がれたのよ。もう少し前見たら ?」

「それはすまねぇ、

あの二人本当に演技中はいい感じ

なんだけどなぁ。」


周りが慌ただしく片付け始める中、

俺は付き合いが長すぎる友達同士を

くっつける難しさを感じつつあった。


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