静寂


 彼女は胡散臭い占い師ではあるが、その実力は確かなものである。少々面倒臭く、拗ねれば金を寄越せと言ってくる陰険で陰湿で引きこもり。そんな彼女ではあるが、酒を飲めば一気に吾妻と意気投合、最後は喧嘩をして終わるものの、彼女と飲む酒は不思議と美味かった。女として見ていないことから、おそらく彼女は吾妻にとって最高の飲み仲間である。

 その飲み仲間とも、最近飲めていない。

 おかげでこの部屋も静かな日々が続いていた。

 不毛となった一か月は本当に不毛であったと振り返り、吾妻は壁にもたれかかってぼんやりと揺れている電灯から垂れ下がった紐を見つめる。それから壁を見て、自分の姿が映る姿見が視界入ってきた。

 姿見に自分が映っているとはいえ、六畳の部屋にぽつりと一人、どこかで似たようなことがあったようなと思い出し、吾妻は目の前の殺風景な壁が牢の柵に見えて苦笑した。

 あの日は傍に、男装趣味を持つ女子高生、鴻巣語がいたのだ。


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