プライマリー・ウェポンズ

@Trap_Heinz

act.1 未知との遭遇

act.1-1

西暦2098年4月20日 11時40分

輸送艦リリアンマイン号 艦橋内


≪護衛艦ルフートより入電、およそ時速700kmでこちらへ向かってきている物体を発見、デブリ清掃班の退避を勧告しています≫

「了解、清掃班を回収し現宙域を一旦離脱。返信しろ、そいつはただの流星か?大気圏で燃え尽きればいいが……」

「了解……。……? 艦長、ルフートへ無線が繋がりません。電波障害でしょうか?」

「憶測で物を判断するんじゃない。清掃班を回収したら合流しよう。下部コンテナハッチオープン、清掃班の収容急げ」

「了解」

≪全作業員へ、作業中断せよ、撤収!≫


 株式会社S.C.E.D(Space.Clean.and.Earth.Defense)社。よくその頭文字をつなげた"スケード"などと呼ばれている。名前の通り地球の周りを浮遊している人工衛星の残骸などの回収・破棄。また大気圏で燃え尽きることが出来ないような巨大なデブリが地球圏へ飛来した際のそれの破壊を主な活動としている。


同時刻

輸送艦リリアンマイン号 船外


「あ? 撤収命令? まだこのあたりのデブリ回収は終わってないぞ?」

≪なんだか高速でこっちに向かってきてる物体があるっぽいですよ?≫

「そいつは破壊しないのか?」

≪一番遠くにいたルフートが見つけたらしいすから、壊すんじゃないですかね?≫

「なんだか引っかかるな……。まぁいい、全員撤収! とりあえず作業を中断だ! 急げ急げ!」


 宇宙空間での活動用の人間型ロボット、通称"アーマースーツ"。正式には長ったらしい型番があったが……。さらにアーマースーツに合体させ使用されている巨大なデブリ回収用のボックスや、デブリ粉砕機などがある。よく使うのはチームで巨大な鋼鉄ワイヤー製のネットを使ってデブリを一気に集める方法、手っ取り早いがなかなか新人とかとはチームワークが取れずに苦労する事もある。まぁこの作業が出来てやっと仲間入り、みたいなもんだ。


 又、巨大デブリ破壊・及び宇宙を軍事利用しようとする"敵"からの防衛手段として兵器の使用が国連から許可されており、一般的なアーマーには80mmマシンガンと45mmハンドガン、左右の足にナイフを装備。デブリ爆破用爆弾なども扱える。更にアーマー用の輸送艦や警備艇・護衛艦なども配備されており、いわゆる宇宙を軍事利用しようとする奴らの為の抑止力みたいな一面も持っている。実にアメリカらしい会社である。30%は一般株主から、残りは全てアメリカ政府の出資であり、アメリカ軍部とも親密なつながりがある。株式会社S.C.E.Dの概要はこんなものだろう。話へ戻る。


 その時、遠くの宇宙で一つの光が見え、一瞬にして暗闇へ埋もれる。「?」部下のアーマースーツをポッドへ誘導している時、ちょうど見えたのだ。そのとき、直接回線で無線が入ってくる。


≪ラビさん! 大変です、ルフートが、沈没したみたいです……≫

「なんだって!? じゃあ今の光は……!」

そう、警戒中だった護衛艦ルフートが消滅した際の光だったのだ。

≪見えましたか!?≫

「あぁ、一瞬光が見え……」

更に全体回線で無線が入ってくる。

≪全班員に告ぐ、護衛艦ルフートが沈没。高速で接近している物体はそのまま直進してきている。おそらくそれと接触しやられた……≫

俺たちの輸送艦リリアンマイン号艦長からの緊急放送であった。

≪全員退艦しろ! この船は回避行動へ移れない!≫ 

はッ! 茫然と放送へ耳を傾けていたことから我に返る。

「全員退艦だ! 機体ロック解除! 解除!」

無線を開き叫ぶ。

≪リーダー! ロックが外れません!≫

一人の若い男の声が入る。

「164! 何をしている、ロック解除しろ!」

≪ダメです! 強制解除キーも効きません!≫

広い格納庫で一人アーマースーツの輸送船との固定用ロックが解除できずに泣きながら操縦している。

「もういいコックピットから降りろ! 俺のスーツのコックピットへ移れ!」

俺も怒鳴りながらも必死に対応する。肩に164の文字がマーキングされたアーマースーツのコックピットが開き、今年入ったばかりの新人の姿が見えた。その時、何かが輸送船の上部へぶつかる。

「くっそ!? 例の物体か!?」

すかさず俺のコックピットのハッチを開け新人を乗せようとするが、"物体"が輸送船上部を貫通し、目の前の164号機へ直撃し、爆散する。

「はぁっ……!?」

目の前の光景に、口が開き、瞳孔が開き。衝撃を感知したアーマースーツが自動でコックピットハッチを閉じる。その新人の血まみれの船外活動用のヘルメットが、俺のアーマースーツのメインカメラへぶつかる。

「クソ!!」

俺のアーマーは爆発により格納庫の壁へ叩きつけられ、埋もれていた。

≪リーダー……脱出……はや……≫

無線が途切れ途切れ入る。目の前のモニターに映るのは、船上部を貫通し、舞い降りてきた"白い鳥"。全身が白く発光しているが、鋭い目のようなものは不気味に赤く光っている。

「なんだ……コイツぁ……!?」

機体を起き上がらせ、腰に装備されたハンドガンを抜きその鳥のようなモノへ向け発砲する。頭部のくちばしは銃弾を受け付けず、すぐに羽の根本へ狙いを定め3発撃ちこむ。真っ赤な体液が無重力空間へ溢れでる。

「この野郎ッ!!」

弾の切れたハンドガンを投げ捨て、両足へ装備されたナイフを取り出し、一気にスラスターを吹かせ距離を詰める。相手はジタバタと再び飛ぼうともがいているが、腹部へ潜り込み思い切りナイフを突き刺す。白い体から大量の体液が吹き出し、モニターが真っ赤に染まる。外部カメラのワイパーを使い、それを除け、さらに頭部へナイフを突き刺し、頭を胴体から引き千切る。

 その時、格納庫の奥で爆発が起こり、外へ放り出されそうになる。

「てめえの頭をもらう!」

思い切り左腕でそいつのくちばしを鷲掴みにし、爆発と共に船外へ放り出される。


 船外を見渡し唖然とする。

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