第11話 ドワーフ
曰くドワーフとは、背が低くずんぐりむっくりとした体型に男は大きな髭を蓄え、女は幼女と見紛う姿をしている。
その背の低さとは想像できないほどに力が強く、また鉱石との親和性が高いため、鍛冶を生業としているものが多いと言われている。後は……後は……あぁ、酒が強いという特徴もあったな。殆どの創作物でドワーフは総じて酒を好み、蟒蛇だったな。それはもう酒が飲料水とばかりに飲んでいるイメージが強いよな。
さぁて……リューカルさんの世界のドワーフはどんな感じなんだろうな。異世界ものでよくドワーフと相対するエルフは、種類豊富でそのどれもが強烈な個性を発揮していたが、まさかドワーフまでそんなことはないだろう。……ないよね?
「ドワーフですか?そうですねー私たちの世界のドワーフは、トーヤさんの認識とあまり違いはありませんね。」
「あれ?そうなの?」
「まぁ強いて言うならそうですね、トーヤさんの言った通り基本的には鍛冶で生計を立てているドワーフが大半ですが、今ではその情勢が崩れてきています。」
ということは、鍛冶をしなくなったドワーフが増えてきているのか。確か、冒険者というフリーターもしくは傭兵ともいえる異世界ド定番の職業もあるみたいだからそちらに流れているんだろうかと思っていたら
「最近のドワーフの職業トレンドは、鍛冶師に次いで冒険者とか石像作家に土木建築に……イラストレーター。」
「待て待て待って。」
おかしい。今の流れはおかしい。鍛冶は当然として冒険者も分かる。石像作家は、まぁ石に対する美術性とか何とかで分かる気もする。土木建築も見た目的に合っている。しかしその後!何だイラストレーターって。そこは画家じゃないんだな。
「トーヤさんの反応も無理はありません。ドワーフのイラストレーターはこちらの世界でも最近になって認知され始めたのですから。」
「あ、そうなんだ。」
「まぁ、認知され始めたきっかけは私なんですけどね?」
「流れが読めん。」
どうしてそこでリューカルさんが出てくるのか。
その答えとばかりにリューカルさんは一冊の本を照れ気味に差し出してきた。これは……表紙にどこかで見たことあるような可愛らしい女の子が描かれているな。作品名は、『僕と君の生徒会戦争』。作者は、リューカル・ドラグナイ……ん?
「これ、リューカルさんの本?」
「えぇ、お恥ずかしながら私の処女作です。」
リューカルさんの本、初めて見たな。今までそれとなしに見せてほしいなと言ってきたが、躱されてきたので最近は言わなくなったのだが……本当に本出していたのね。作家と言うのは嘘じゃなかったんだな。
でも、何でこのタイミングで本を出してきたんだ?今イラストレーターの話していたよな……あ、もしかして
「この本のイラスト描いているのって。」
「はい、私の担当イラストレーターのライムントさんはドワーフなんですよ。」
マジか!ドワーフに対するイメージの強さから描いたとしても男臭いようなイラストかと思っていたが、何というか、凄い萌絵だな。こっちの世界にあってもおかしくないほどのレベルだ。
名前を聞く限り男のようだが、繊細な作業も出来るんだな。いや鍛冶自体が繊細な作業の積み重ねのようなものか。
「ライムントさんはいつも言ってました。ドワーフの土臭いイメージから脱却してやるーって。私もライムントさんの絵を最初見たとき感動しましたよ。それで頼み込んで担当イラストレーターになってもらったんです。そしていざ本が発売となったら話題になりましてねー。無名の私の本を素晴らしい表紙絵だって手に取ってもらってそこから中身を読んでもらって……」
確かにこんなイラストが表紙に載っていたら俺もつい買ってしまうかもしれないな。となると、どの世界でも表紙のイラストで買う人多いんだな。ちょっと泣けてくる。
うん、忘れよう!リューカルさんから本を戴いたことですし俺も読んで……あれ?
「リューカルさん、あの、読めないんですが?」
「魔法でページ開けないようにしましたが?」
「何で!?」
「恥ずかしいからですよ!」
そういうことで俺は結局リューカルさんの本を読むことはかなわなかった。
・
・
・
「しかし、ライムントさんのイラスト描き込み量凄いな。ドワーフの男性とは思えないほど繊細なタッチだ。」
「あぁ言ってませんでしたね。」
「何が?」
「ドワーフって、男性は女性風の。女性は男性風の名前を付ける風習があるんですよ。」
「……ということは?」
「ライムントさん、女性です。」
「さいですか。」
「もう一つ補足情報として、ドワーフは火山エルフと親交が深いですね。鍛冶つながりで。」
「それ以外のエルフは?」
「森エルフ以外は特に嫌悪感はないってライムントさんは言ってましたね。」
「……森エルフ本当になにしたんだ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます