第10話 野菜
「今日はお野菜多めなんですねー美味しいからいいですけど。」
「散々一緒に食事してるけど、リューカルさんは竜なのに野菜好きだよね。」
「野菜も取らなきゃ竜でも長生きできませんから。」
あ、竜にもやっぱり食事バランスとかあるんだな。最近肉多めだから今日は野菜メインにしたんだけど、不満があるとかじゃなくてよかった。
……でも肉の入ってる青椒肉絲の方に手がよく伸びるのは気のせいじゃないよな?まぁ美味しく食べてくれる分にはいいんだけど。
「リューカルさん、そっちの世界の野菜ってどんななの?」
「どんなのって言われましても……そうですねぇ。基本的にはトーヤさんの世界と同じ感じですよ?農家も存在しますしね。」
「へぇーって基本的にはって?」
そこはかとなく、嫌な予感するんだけど?異世界要素きそうな気がするんだが?
「野生の野菜は魔物化して人を襲いますね。」
「襲うの!?」
「野生である分、旨味は凄いんですよ。でも、食われるくらいなら喰ってやるーって襲い掛かってきますね。リンゴに大きな口がぐぱぁって。」
魔物化した野菜を持ち帰って研究し、人を襲わないように品種改良された結果が、リューカルさんの世界の農家で育てられている野菜。野生の状態だと魔菜と言うらしい。最後に人という字をつけてみたいな。
それでもたまに凶暴化するから、農家はある程度戦える人間じゃないといけないし、常に武器を装備していると。
「ベテランの農家になるとですね、わざと魔菜に近い野菜を育てるんです。」
「え?危なくない?」
「そこは腕の見せ所です。そもそも凶暴化させないように育てるか……凶暴化しても力でねじ伏せるって人もいます。リスクもありますが、野生を失った野菜に比べて旨味が段違いですからね。」
こっちの世界では農家はギャンブルだなんて声を聴くが、どの世界でも一緒なんだな。ギャンブルの方向性が違う気がするが。
「でも、そんな話を聞いたら野菜出すのが申し訳ないな。」
「いえいえいえ!そんなことないですよ!私、トーヤさんの世界の野菜好きですよ?私の世界の物と変わらないくらいに!」
「そう?」
「そうですよ。私の世界は凶暴化しなきゃそれでOKですからね。それに比べてトーヤさんの世界は、育てやすくする上に美味しさまで追及しているじゃないですか。その結果が私の世界にも負けない野菜なんですから、すごいですよ。」
笑顔でそう告げると、リューカルさんは再び食事に戻った。
……実際に俺が育てているわけでも、野菜を研究しているわけでもないけれど、こうして別の世界の人……人?に俺の世界の物を褒められるというのは正直嬉しいな。
だからって俺の分で食べないでほしいんだけどな?
・
・
・
「ちなみに魔菜が魔物や人間といった生物を喰らい、成長すると人型の魔菜人になります。」
「いるのか魔菜人……ちなみにスーパー魔菜人になったりは?」
「ちょっと何言ってるかわかりません。」
「あ、すいません。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます